オール電化の家は、停電すると調理も給湯も止まります。ガスが残る家より止まる範囲が広い。だから蓄電池を検討する動機は分かりやすいのですが、選ぶときに先に決めるのは容量ではありません。IHもエコキュートも200Vの機器で、これらが動くかどうかは蓄電池の出力と配線方式で決まります。そして出力は、比較用のラベルには載っていません。
オール電化の家は、200Vの機器が主役になっている
IHクッキングヒーターもエコキュートも200Vで動きます。蓄電池側が200Vに対応しているかは製品によって書き方が違います。ある単機能タイプのQ&Aはこうです。
Q 停電時、200Vの電化製品は使用できますか。
A 全負荷配線、特定負荷配線ともにAC200V対応しています。
別のシリーズでは標準装備と書かれています。
Q 蓄電システムは200Vに対応していますか。
A 全負荷200Vを標準装備しています。
ただし、対応しているという記載と、実際に使えるかは別です。同じメーカーの別機種の注意書きにはこうあります。
非常時兼用コンセントは、単相3線式AC100/200V仕様です。連系時で片相あたり合計29.5A(2950W)未満の機器を接続してください。エアコンやIH機器などの200V機器も接続可能ですが、接続に条件がある場合があります。また一度に多くの機器をご使用になると保護のために出力が頻繁に停止し、機器の故障の原因となることがあります。ポンプやモーターなど起動時に大きな電力を必要とするものは使用しないでください。
「接続に条件がある場合があります」。ここを販売の場で具体化しておかないと、停電のときに初めて分かることになります。停電時に何が動くかの一覧は停電で何が動くかの記事に整理しました。
停電中は、足りない分を買って補うことができない
ここがオール電化で特に効いてくる違いです。普段は、蓄電池の出力を超えて電気を使っても問題になりません。
Q 消費電力が蓄電池の最大出力を超えた場合はどうなりますか。
A 通常の商用電力連系時は、不足分を商用電力から買って給電します。(特にご利用時に切り替えを感じるような状況にはなりません。)
「通常の商用電力連系時は」と書かれています。停電中は買えません。出力を超えた時点で止まる、という構造です。実際、大きな電力を使う家電は動かない場合があるとメーカーの表に明記されています。
消費電力(動作電流)が大きい家電製品※2/動作しない場合がある/電子レンジ、電気ストーブ、業務用機器等
※2蓄電システムが自立運転を停止し、再起動を繰り返す場合があります。その際は使用している家電製品のコンセントをいくつか抜いてください。
IHとエコキュートを同時に動かす、といった使い方は、この再起動を繰り返す状況に入りやすい組み合わせです。ガスが残る家なら調理と給湯は別の系統ですが、オール電化ではどちらも同じ出力の枠を取り合います(編集部の整理です)。
出力は、比較用のラベルに項目がない
蓄電池には業界団体の性能表示ラベルがあり、11項目で比較できるようになっています。ただし、この11項目に定格出力や自立出力に当たる項目はありません。出力はラベルでは比較できない、ということです。
カタログ側の指針には、出力の記載を推奨する項目が別に置かれています。
定格出力電圧 定格電圧 出力側の端子電圧(実効値)定格電圧を記載する 100 V 200-220 V,200/220 V
実機の値はメーカーのQ&Aに書かれています。
Q U5パワコンの定格出力は何kWですか。また、通常時と停電時は違いますか。
A 系統連系時の定格出力は・ESS-U5M1:4.0kW、・ESS-U5L1:5.9kW 自立出力時の定格出力は・ESS-U5M1:4.0kVA、・ESS-U5L1:5.9kVAです。
Q パワコンの最大出力、蓄電池の充放電電力は何kWですか。また、通常時と停電時は違いますか。
A 【パワコン】ESS-T5シリーズ:連系時5.9kW、停電時5.9kVA、ESS-T6シリーズ:連系時9.9kW、停電時5.9kVA
| 確認項目 | どこに書かれているか | なぜオール電化で効くか |
|---|---|---|
| 200V対応の有無 | メーカーのQ&A・仕様表 | IH・エコキュートが200V |
| 全負荷配線か特定負荷配線か | メーカーのQ&A・施工の説明 | 特定負荷では対象外の回路が止まる |
| 停電時の定格出力(kVA) | メーカーのQ&A・カタログ | 停電中は不足分を買えない |
| 片相あたりの上限 | 機種の使用上の注意 | 200V機器の同時使用に条件が付く |
| 初期停電時放電容量 | 性能表示ラベル(11項目) | 何時間もつかの前提になる |
ラベルで比較できるのは容量側で、出力側は自分で聞かないと出てきません。容量の考え方は何kWh必要かの記事にまとめています。
「夜にためて昼に使う」が成り立つかは、契約次第
オール電化の家は、夜間が安いプランを前提に設計されていることが多い家です。蓄電池のメーカー説明も同じ前提に立っています。
蓄電システムの基本的な動作 割安な深夜電力や昼間の太陽光発電を蓄電池に貯めて、朝~夜に使います。蓄電池ではまかないきれない電気は、電力会社から買って使います。
この「割安な深夜電力」が今の契約でも割安かどうかは、契約書を見ないと分かりません。プランの型ごとの違いは電気料金プランの記事に整理しました。電気料金そのものの推移は電気代の値上がりの記事にあります。
なお、蓄電池を入れても電力会社との契約は必要です。メーカーのQ&Aにも明記されています。
Q 電気の自給自足を行うため、電力契約のない家に設置することはできますか。
A できません。必ず電力会社との契約が必要です。
太陽光があるかないかで、ためる電気の中身が変わる
太陽光がない家では、ためる電気はすべて買った電気です。蓄電池の効果は時間帯の単価差の分だけになります。メーカー自身も、太陽光との併設を勧める書き方をしています。
Q 太陽光を設置していない家にも設置可能ですか。
A 設置は可能ですが、節電などの効果を引き出すためには太陽光発電も設置されることをおすすめいたします。
太陽光なしで蓄電池だけを入れる場合の考え方は蓄電池だけを設置する記事にまとめました。太陽光でどれだけ電気代が下がるかは電気代の記事に整理しています。
すでにエコキュートがある家に後から蓄電池を入れること自体は、機器の側では問題にされていません。
Q 既に「エコキュート」が設置されている場合、設置は可能ですか。
A 可能です。
見積もりのときに聞く5項目
ここから先は編集部の整理で、公的な基準ではありません。
- 停電時の定格出力をkVAの数字で出してもらう。「200V対応」だけでは足りません
- 全負荷配線と特定負荷配線のどちらになるかを確認する。特定負荷なら、どの回路を残すかを決める必要があります
- IHとエコキュートを停電時に使う想定があるなら、同時に動かせるかを書面で確認する
- 片相あたりの上限があるかを聞く。単相3線式では相ごとに枠が決まっている機種があります
- 今の契約プランの時間帯区分と、蓄電池の充電時間帯の設定範囲が合うかを確認する
見積書の読み方は蓄電池の見積もりの見方、機器側の設定の考え方は運転モードの記事にまとめています。
まとめ
- オール電化ではIH・エコキュートが200V。蓄電池側の200V対応と配線方式が前提になる
- 「200V機器も接続可能ですが、接続に条件がある場合があります」とメーカーの注意書きにある
- 停電中は出力を超えた分を買えない。不足分の購入ができるのは通常の連系時だけ
- 消費電力が大きい家電は「動作しない場合がある」とメーカーの表に明記されている
- 性能表示ラベルの11項目に定格出力の項目はない。出力は自分で聞く必要がある
- 蓄電池を入れても電力会社との契約は必要と、メーカーのQ&Aに書かれている
電気温水器や電気蓄熱暖房機が残っている家は、給湯器の買い替えで撤去の加算が付く場合があります(撤去加算の記事)。
オール電化の家では、容量より先に出力を確かめると判断が早くなります。蓄電池のまとめから関連する記事をたどってみてください。
この記事の情報について
出典は、ニチコン株式会社のQ&A「ESS-T5/T6シリーズ トライブリッド蓄電システム」「9.7kWh 単機能蓄電システム(ESS-U5)」および製品紹介ページ「ESS-H1シリーズ」(同ページ上で販売終了品と表示。200V機器の接続条件、自立出力の仕様)、一般社団法人日本電機工業会(JEMA)「蓄電システム 性能表示ラベルのススメ」および「低圧蓄電システムのカタログ等記載事項 作成指針」(2023年3月22日制定)、オムロン ソーシアルソリューションズのFAQ「経済モードと安心モードとグリーンモードの違いは何ですか?」です。いずれも公式ページを直接取得して確認しました。確認日は2026年9月6日です。掲載した機種の数値は特定の製品のもので、他機種に当てはまるものではありません。編集部がオール電化住宅に蓄電池を導入して検証した立場ではなく、記載は公表資料の読み取りです。
確認していない範囲: オール電化住宅の平均的な電力使用量・電気代の公的統計は今回取得していません。IHクッキングヒーターとエコキュートの機種ごとの消費電力は、メーカー・機種で幅があるため横断的な値を確認していません。深夜が安い料金プランの現在の新規受付状況は各社で異なるため扱っていません。オール電化住宅に蓄電池を導入した場合の削減額は、家ごとに前提が違うため扱っていません。引用したメーカー以外の200V対応・出力の仕様、全負荷配線に切り替える場合の分電盤側の工事条件も確認していません。
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