「蓄電池は何kWhにすればいいですか」に、ひとつの正解はありません。決め方は3つあり、答えが一致しないことがあるからです。
- 夜に使う電気の量から逆算する — 必要量の下限が出る
- 太陽光の余る量から逆算する — これを超えると満充電にならない
- 1kWhあたりの価格から考える — 小さいほど割高になる
この記事では、公的な数字が取れる範囲で3つの逆算をやります。実際の出荷統計とも突き合わせます。
いま売れているのは10.06kWh。ただし「平均が正解」ではない
日本電機工業会(JEMA)が2026年6月5日に公表した統計では、2025年度の定置用蓄電システムの1台あたり平均容量は10.06kWhでした。年度計で10kWhを超えたのは、この年が初めてです。
容量帯ごとの構成比の変化が、もっとはっきりしています。
| 容量帯 | 2020年度 | 2025年度 |
|---|---|---|
| 3〜6kWh未満 | 25.5% | 5.6% |
| 6〜10kWh未満 | 56.6% | 55.8% |
| 10kWh以上 | 8.9% | 38.0% |
小さい帯が5年で約5分の1(0.22倍)に減り、10kWh以上が約4.3倍に増えました。真ん中の6〜10kWh未満はほとんど動いていません。
ここから先は当サイトの整理です。この数字は「みんなが選んでいる容量」であって、「あなたに必要な容量」ではありません。下で逆算すると、平均的な家庭の夜間使用量から必要になる量は、この主流帯より小さく出ます。
逆算1:夜に使う電気の量から
蓄電池が働くのは、太陽光が発電しない時間です。だから必要量は「夜に使う電気の量」が出発点になります。
1世帯が1年に使う電気は、環境省の家庭CO2統計(令和5年度)で全国平均3,911kWh。戸建だけなら年17.7GJ、約4,917kWhです。1日あたりに直すと次のようになります(当サイトの計算)。
| 年間 | 1日あたり | |
|---|---|---|
| 全国平均(戸建+集合) | 3,911kWh | 約10.7kWh |
| 戸建のみ | 約4,917kWh | 約13.5kWh |
問題はここからです。このうち何割を夜に使うのかを示す公的な統計を、当サイトでは見つけられませんでした。そこで数字を決め打ちせず、3通り並べます。
| 夜間の割合 | 全国平均の家庭 | 戸建の家庭 |
|---|---|---|
| 30% | 約3.2kWh | 約4.0kWh |
| 40% | 約4.3kWh | 約5.4kWh |
| 50% | 約5.4kWh | 約6.7kWh |
そしてここで一手が要ります。カタログの容量がそのまま使えるわけではありません。「蓄電池容量」と「初期実効容量」は別の項目で、後者のほうが小さくなります。仮に実効容量が9割だとすると、必要なカタログ容量は上の値を0.9で割った次の値です(当サイトの計算)。
| 夜間の割合 | 全国平均の家庭 | 戸建の家庭 |
|---|---|---|
| 30% | 約3.6kWh | 約4.5kWh |
| 40% | 約4.8kWh | 約6.0kWh |
| 50% | 約6.0kWh | 約7.5kWh |
ここから先は当サイトの整理です。戸建で夜に半分使うという強めの前提を置いても、出てくるのは約7.5kWhです。出荷統計の主流である10kWh以上(38.0%)より小さい。
「平均が10.06kWhだから10kWh」と決めると、夜間の使用量から見て過大になる可能性があります。ただし、下の2つの理由で大きめを選ぶ合理性もあります(→ 逆算2・3)。
実効容量の9割という数字は相場ではありません。JEMAの指針が示した記載例(蓄電池容量5.0kWhに対し初期実効容量4.5kWh)から置いた仮の値です。カタログに性能表示ラベルがあれば、その値で割り直してください。詳しくは 蓄電池の「10kWh」は実際に使える量ではない にまとめています。
逆算2:太陽光の余る量から
もう一つの上限が、太陽光がどれだけ余るかです。余剰が少なければ、大きな蓄電池を入れても満充電になりません。
国の想定値では、太陽光1kWあたりの年間発電量は約1,200kWh(設備利用率13.7%からの当サイトの計算)。自家消費率30%なので、余って売電に回るのが70%です。
| 太陽光の容量 | 年間発電量(国の想定) | 余剰分(70%) | 1日あたりの余剰 |
|---|---|---|---|
| 4kW | 約4,800kWh | 約3,360kWh | 約9.2kWh |
| 5kW | 約6,000kWh | 約4,200kWh | 約11.5kWh |
| 6kW | 約7,200kWh | 約5,040kWh | 約13.8kWh |
すべて当サイトの計算です。ただしこれは年間を平均した値で、冬や雨の日はこれより大幅に少なくなります。季節変動を含めた実際の余剰量は、屋根の条件で変わります。
ここから先は当サイトの整理です。年平均で見ても、太陽光4kWの家に10kWhの蓄電池を入れると、余剰だけでは満充電にできない日が出てきます。蓄電池の容量は、太陽光の容量とセットで考える項目です。
逆算3:1kWhあたりの価格から — 小さいほど割高
ここがいちばん見落とされます。経済産業省の検討会資料には、こう書かれています。
家庭用蓄電システムのkWhあたりシステム価格は5kWhを境界として大きく低減していることが見受けられる。
| 容量帯 | 設備の単価 | 工事費の単価 |
|---|---|---|
| 5kWh未満 | 15.0万円/kWh | 1.6万円/kWh |
| 5〜10kWh | 10.6万円/kWh | — |
| 10kWh以上 | 10.7万円/kWh | 0.6万円/kWh |
5kWh未満だけが突出して高く、5kWh以上はほぼ横ばいです。「小さくして安く済ませる」という考え方は、1kWhあたりで見ると不利になります。
ただし総額は別の話です。10kWhを10.7万円/kWhで買えば約107万円、5kWhを15.0万円/kWhで買えば約75万円。支払う額は大きいほうが多くなります(当サイトの割り算)。単価と総額は必ず両方見てください。価格の詳しい読み方は 家庭用蓄電池の価格【2026年8月】5kWh未満だけ1kWhあたり15万円 にあります。
3つの逆算をまとめると
ここから先は当サイトの整理で、公的な基準ではありません。
| 観点 | 出てくる容量 | 意味 |
|---|---|---|
| 夜の使用量から | 約3.6〜7.5kWh | 必要量の下限。これを下回ると夜を越えられない |
| 太陽光の余剰から | 太陽光4kWで約9.2kWh | 上限。これを超えると満充電にならない日が増える |
| 1kWhあたりの価格から | 5kWh以上 | 5kWh未満は単価が突出して高い |
3つが重なるのは、おおむね5〜10kWhの帯です。出荷統計で6〜10kWh未満が5年間ずっと55%前後で動いていないのは、この重なりが理由かもしれません(当サイトの推測であり、JEMAがそう説明しているわけではありません)。
停電対策が目的なら、考え方が変わる
ここまでは経済性の話です。停電への備えが目的なら、逆算の出発点が変わります。「何日ぶん、何を動かしたいか」から決めることになります。
このとき見るのは「初期実効容量」ではなく「初期停電時放電容量」です。普段使える量と、停電時に使える量は別項目として定義されています。また、家じゅうが使えるのか一部の回路だけかは、機器の性能ではなく分電盤との接続方法で決まります。
この2点は 蓄電池の全負荷型と特定負荷型の違い|性能ラベルにはない分類の正体 で扱っています。
容量を決める前に確認すること
ここから先は当サイトの整理で、公的な基準ではありません。
| 確認すること | なぜ |
|---|---|
| 検針票12か月分の使用量 | 全国平均ではなく自分の家の数字で逆算する |
| 提案された容量はカタログ容量か実効容量か | 同じ「10kWh」でも指すものが違う |
| 太陽光の容量とのバランス | 余剰が少なければ満充電にならない |
| 1kWhあたりの単価 | 総額を容量で割る。5kWh未満なら15万円/kWhと照らす |
| 目的は経済性か停電対策か | 目的で見る項目が変わる |
容量が決まったら、その容量で何年で元が取れるかを計算できます。蓄電池の回収年数を計算する|得の正体は売電単価との差 で、容量と価格を入れて試せます。太陽光本体は 太陽光の回収年数計算ツール です。
蓄電池全体の判断軸は 蓄電池は必要か|判断の軸は売電単価、選び方の全体像は 家庭用蓄電池を選ぶ前に|容量・価格・補助金・消防の基準、見積もりの取り方は 蓄電池の見積もりの取り方|太陽光とセットか、後からか をご覧ください。
まとめ
- 2025年度の出荷は平均10.06kWh。10kWh以上が38.0%まで増え、3〜6kWh未満は5.6%まで減った
- ただし平均は「必要量」ではない。夜間の使用量から逆算すると、戸建・夜間50%という強めの前提でも約7.5kWh
- 太陽光の余剰が上限になる。4kWなら年平均で1日約9.2kWh。冬や雨の日はこれより少ない
- 5kWh未満だけ単価が突出して高い(15.0万円/kWh)。5kWh以上はほぼ横ばい
- 3つの逆算が重なるのはおおむね5〜10kWhの帯
- 停電対策が目的なら別の項目を見る。「初期停電時放電容量」と、全負荷か特定負荷か
この記事の情報について
以下を2026年8月27日に確認したものです。数値の出典は当サイトの既存記事と同一です。
- 日本電機工業会(JEMA)自主統計(2026年6月5日公表)
2025年度の平均容量10.06kWh、容量帯構成比(3〜6kWh未満5.6%・6〜10kWh未満55.8%・10kWh以上38.0%)、2020年度との比較。この統計は家庭用だけではなく産業用・業務用を含み、用途別の内訳は公表されていません。参加14社の自主統計です - 環境省「家庭でのエネルギー消費量について」(令和5年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査)
世帯当たり年間電気消費量3,911kWh(戸建+集合の平均)、戸建のみ年17.7GJ(約4,917kWh) - 経済産業省 定置用蓄電システム普及拡大検討会
容量帯別の単価(5kWh未満15.0万円/kWh・5〜10kWh 10.6万円/kWh・10kWh以上10.7万円/kWh)、工事費の単価 - 経済産業省 調達価格等算定委員会
設備利用率13.7%、自家消費率30%、余剰売電比率70% - 日本電機工業会 性能表示ラベルの指針
記載例(蓄電池容量5.0kWhに対し初期実効容量4.5kWh)。これは書き方の見本であり、相場ではありません
1日あたりの使用量、夜間割合ごとの必要容量、太陽光の余剰量、3つの逆算が5〜10kWhで重なるという整理は、いずれも当サイトの計算・整理であり、公的な基準ではありません。
確認していない範囲です。ここが重要です。家庭の電気使用量のうち夜間が占める割合の公的な統計は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。この記事が30%・40%・50%を並べているのはそのためで、どれかが正しいという意味ではありません。実効容量の9割も指針の記載例から置いた仮の値です。また、季節ごとの余剰量の変動、電池の劣化による容量低下、世帯人数別の使用量、停電時に必要な容量の目安についても、公的な数値を確認できていません。
この記事は公開情報を整理したものです。当サイトが蓄電池を設置し、容量を実測した立場で書いたものではありません。実際の容量は、検針票と複数社の見積もりで確認してください。
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