蓄電池が得になるのは「電気を安く売らずに、高く買わずに済む」からです。得の大きさは、電気を買う単価と、売る単価の差で決まります。
この差は、置かれている状況で大きく変わります。国の想定値で計算すると、次のとおりです。
| 状況 | 売電単価 | 1kWhあたりの差 |
|---|---|---|
| FIT 1〜4年目 | 24円/kWh | 3.31円 |
| FIT 5〜10年目 | 8.3円/kWh | 19.01円 |
| 卒FIT後 | 10.0円/kWh | 17.31円 |
買う単価(自家消費の価値)は国の想定で27.31円/kWhです。そこから売電単価を引いた額が、蓄電池にためて使うことで生まれる差になります(当サイトの計算)。
FITの最初の4年間は、差が3.31円しかありません。5年目に売電単価が8.3円へ下がった瞬間、差は19.01円へ広がります。同じ蓄電池でも、いつ入れるかで得の大きさが約5.7倍ちがうということです。
下のツールで、ご自身の条件を入れて計算できます。
| 蓄電池容量(カタログ値) | kWh |
| 実効容量の割合 | % |
| 1kWhあたりの価格(工事費込) | 万円/kWh |
| 補助金(合計) | 万円 |
| 買う単価(自家消費の価値) | 円/kWh |
| 売る単価(売電単価) | 円/kWh |
| 満充電にできる日の割合 | % |
初期値に何を置いたか
初期値の12.1万円/kWhは、経済産業省の検討会が補助事業のデータから推計した家庭用の価格です。設備費11.1万円/kWh+工事費1.0万円/kWh(2023年度時点)。
補助金を使わない場合は、同じ資料が別の水準を示しています。
また、事業者ヒアリングより、補助事業以外で家庭用蓄電システムを導入する場合、設備費は15~20万円/kWh、工事費は2万円/kWh程度が標準的な水準となることがわかった。
補助を使わないなら、17〜22万円/kWhに置き直してください。回収年数は大きく変わります。容量帯による違い(5kWh未満は15.0万円/kWh、5kWh以上は10万円台)を含めた価格の読み方は 家庭用蓄電池の価格【2026年8月】5kWh未満だけ1kWhあたり15万円 にまとめています。
実効容量の割合90%は、相場ではありません。日本電機工業会(JEMA)の指針が示した記載例(蓄電池容量5.0kWhに対し初期実効容量4.5kWh)から置いた数字で、実在の製品の値でも市場の平均でもありません。カタログに性能表示ラベルがあれば、その値に置き換えてください。この2つの容量が別項目である理由は 蓄電池の「10kWh」は実際に使える量ではない で扱っています。
「10年・15年」という比較の基準はどこから来たか
ツールが結果を10年・15年と比べているのには根拠があります。国が家庭用蓄電池の目標価格を決めたときの算出根拠です。資源エネルギー庁の資料にはこうあります。
また、投資回収が可能なレベルを実現するため、2030年度の目標価格として家庭用は7万円/kWh、業務・産業用は6万円/kWh(ともに工事費込み)と設定。
同じ資料に、この7万円/kWhをどう出したかの注記があります。電気の購入価格27〜29円/kWh、太陽光4.7kW、売電6〜10円/kWh、蓄電容量3〜13kWhで10年または15年で投資回収するケースから設定した、と書かれています。
ここから先は当サイトの整理です。この書き方を裏返すと、国は「投資回収が可能なレベル」を7万円/kWhと見ており、現在の公表値(家庭用11.1万円/kWh、補助なしなら15〜20万円/kWh)はその水準に達していないことになります。
同じ資料には現在の家庭用の価格として「約19万円/kWh(工事費含む・税抜)」というラベルも並んでいます。7万円/kWhという目標は、そこから半分以下にするという意味です。
このツールは、国の目標価格の考え方を再現できる
計算式が妥当かどうかを確かめるために、国が目標として置いた7万円/kWhを、そのままツールに入れてみました。10kWh・実効容量90%・売電8.3円の条件です。
| 1kWhあたりの価格 | 初期費用 | 回収年数(当サイトの計算) |
|---|---|---|
| 7.0万円/kWh(2030年度の目標) | 70万円 | 約11.2年 |
| 12.1万円/kWh(補助事業の推計) | 121万円 | 約19.4年 |
| 19.0万円/kWh(補助なしの水準) | 190万円 | 約30.4年 |
目標価格を入れると約11.2年になり、国が算出根拠に置いた「10年または15年で投資回収」の範囲にきれいに収まります。ここから先は当サイトの整理ですが、このツールの計算は、国が目標価格を決めたときの考え方を再現できていると見てよさそうです。
そして同じ表が、別のことも示しています。現在の公表価格では、10年でも15年でも回収に届きません。国が7万円/kWhという目標を置いたのは、まさにそのためだと読めます。
この計算に入れていないもの
意図的に外した項目があります。公的な固定値が存在せず、当サイトが数字を置くと根拠のない試算になるためです。
- 電池の劣化 — 使うほど容量は落ちますが、公的な劣化率の固定値を確認できていません
- 往復効率の損失 — ためて取り出す間に失われる分。実効容量の定義に一部含まれますが、切り分けた公的値は確認していません
- 機器の保証期間と交換費用 — 公的な相場を確認できていません
- 停電時の価値 — ここが最大の除外項目です。停電で使えることの価値は金額に直せません。経済性だけで判断するなら、この価値はゼロとして計算されます
- 時間帯別プランの昼夜差 — 太陽光が無い場合、ためるのは「買った電気」になります。この場合の判断は 蓄電池だけ設置するのは損か得か で扱っています
「満充電にできる日の割合」を100%のままにすると、回収年数は短めに出ます。実際には、余剰が少ない日や雨の日は満充電になりません。この割合の公的な統計は確認できていないため、初期値を100%に置いたうえで入力できるようにしています。
この計算から言えること
ここから先は当サイトの整理で、公的な基準ではありません。
- FITの最初の4年間に蓄電池を入れる経済的な理由は、ほぼ無い。差が3.31円/kWhしかなく、10kWh・12.1万円/kWhの条件では回収に約111年かかる計算になります。この時期に入れるなら、停電対策など経済性以外の理由が主になります
- 5年目に売電単価が8.3円へ下がると、差は19.01円へ広がる。同じ条件で約19.4年。タイミングを選べるなら、ここが分岐点です
- ただし、それでも国の基準には届いていない。19.4年は「10年または15年で投資回収」を超えています。現在の価格水準では、経済性だけで蓄電池を正当化するのは難しいというのが、公表資料から素直に読める結論です
- 補助金の有無で価格が2倍近く変わる。補助事業12.1万円/kWh に対し、補助なしは17〜22万円/kWh。補助を使えるかどうかが、回収年数を最も大きく動かします
- 停電時の価値を計算に入れていない。経済性だけで判断すると、その分だけ蓄電池は不利に出ます。上の年数は「停電の備えに価値を認めない場合の数字」だと理解してください
この記事は「蓄電池をやめたほうがいい」と言っているのではありません。経済性の計算だけを取り出すとこう見える、ということです。停電時に電気が使えることの価値、非常時の安心、太陽光の余剰を捨てずに済むことをどう評価するかは、金額に直せない部分の判断になります。
太陽光本体の回収年数は 太陽光の回収年数計算ツール|前提を変えると何年変わるか で計算できます。売電単価が二段になっている仕組みは 太陽光の売電価格2026年度|24円は4年だけ、5年目から8.3円、卒FIT後の選択肢は 卒FIT後はどうするか|売る10円と買う27円の差をどう使うか にまとめています。
判断の軸そのものは 蓄電池は必要か|判断の軸は売電単価、見積もりの取り方は 蓄電池の見積もりの取り方|太陽光とセットか、後からか をご覧ください。
この記事の情報について
以下を2026年8月27日に確認したものです。数値の出典は当サイトの既存記事と同一で、いずれも公表資料を直接確認しています。
- 経済産業省 定置用蓄電システム普及拡大検討会
家庭用の設備費11.1万円/kWh・工事費1.0万円/kWh(2023年度推計)、補助事業以外は設備費15〜20万円/kWh・工事費2万円/kWh程度、容量帯別単価(5kWh未満15.0万円/kWh・5〜10kWh 10.6万円/kWh・10kWh以上10.7万円/kWh) - 資源エネルギー庁 資料
2030年度の目標価格 家庭用7万円/kWh(工事費込み)、算出根拠(電気の購入価格27〜29円/kWh・太陽光4.7kW・売電6〜10円/kWh・蓄電容量3〜13kWh・10年または15年で投資回収)、現在の家庭用約19万円/kWh - 経済産業省 調達価格等算定委員会
自家消費27.31円/kWh、2026年度の住宅用売電単価24円(1〜4年目)/8.3円(5〜10年目)、調達期間終了後10.0円/kWh - 日本電機工業会(JEMA)性能表示ラベルの指針
記載例(蓄電池容量5.0kWhに対し初期実効容量4.5kWh)。これは書き方の見本であり、相場ではありません
1kWhあたりの差(3.31円・19.01円・17.31円)、回収年数、および「FITの最初の4年間は経済的な理由が小さい」という読み方は当サイトの計算・整理であり、公的な基準ではありません。
確認していない範囲です。ここが重要です。電池の劣化率、往復効率の切り分けた値、機器の保証期間と交換費用の相場、満充電にできる日の割合の統計、停電時の価値の金銭評価は、いずれも公的な資料を確認できていません。このツールがそれらを計算に含めないのは、そのためです。実効容量の割合90%はJEMAの記載例から置いた仮の値で、製品ごとに異なります。
この記事は公開情報を整理したものです。当サイトが蓄電池を購入し、回収年数を実測した立場で書いたものではありません。実際の判断は、複数社の見積もりと最新の公表資料で前提ごとに確認してください。
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