※本記事にはプロモーションが含まれます
家庭用蓄電池の価格を調べると「1kWhあたり◯万円」という書き方によく行き当たります。ところが公的資料をたどると、その単価は容量によって大きく変わり、しかも補助金を使う場合と使わない場合で別々の数字が示されていました。ここでは経済産業省の検討会がまとめた数字を、区分を崩さずに並べます。
よく引かれる「6.8万円/kWh」は、家庭用の数字ではない
蓄電池の価格として「6.8万円/kWh」という値を見かけることがあります。出どころは経済産業省の検討会資料ですが、その数字が載っているページの見出しは系統用です。原文はこうです。
2024年度の蓄電システム価格は5.4万円/kWh、工事費は1.4万円/kWhとなり、2023年度の試算結果と比較して、蓄電システム価格は0.8万円/kWh、工事費は0.02万円/kWh低下した。
この5.4と1.4を足すと6.8になります。ただし、これは電力系統に置く大型設備の価格です。家の壁際に置く機器の価格ではありません。同じ資料のなかで家庭用と業務・産業用と系統用が別々に集計されているので、どの区分のページかを見ないと桁を取り違えます。当サイトも過去に一度この取り違えをして、記事を訂正しています。
家庭用として公表されているのは、補助事業のデータ
家庭用について検討会が出しているのは、補助金を受けた案件のデータから推計した価格です。2023年度時点の推計で、設備費は11.1万円/kWh、工事費は1.0万円/kWhとされています。
| 区分 | 2022年度 | 2023年度 |
|---|---|---|
| 電池部分 | 4.2万円/kWh | 4.0万円/kWh |
| PCS | 1.6万円/kWh | 1.5万円/kWh |
| その他 | 5.9万円/kWh | 5.6万円/kWh |
| 設備費の総額 | 11.7万円/kWh | 11.1万円/kWh |
| 工事費 | 2.2万円/kWh | 1.0万円/kWh |
目を引くのは、電池そのものが全体の4割に届かないことです。電池部分4.0万円/kWhに対し、「その他」が5.6万円/kWhで最も大きい。この区分には付帯設備とその他費用が含まれると注記されています。蓄電池の見積もりが機器の型番だけでは読めないのは、この配分のためです(当サイトの整理です)。
この推計に使われたのは、経産省と環境省のZEH関連事業や実証事業のデータです。資料は「海外製セルを含む設備コストの平均値であること、四捨五入の関係で合計値が一致しない場合があることに留意が必要」と断っています。
5kWhを境に、1kWhあたりの単価が変わる
同じ資料には、容量区分ごとの単価も載っています。ここが、家庭用蓄電池の価格をいちばん左右する部分です。原文はこうです。
家庭用蓄電システムのkWhあたりシステム価格は5kWhを境界として大きく低減していることが見受けられる。
5kWh未満は15.0万円/kWh、5〜10kWhは10.6万円/kWh、10kWh以上は10.7万円/kWh。小さい機種ほど1kWhあたりが高くなり、5kWh以上ではほぼ横ばいになります。工事費も同じ方向で、5kWh未満は1.6万円/kWh、10kWh以上は0.6万円/kWhです。
単価が下がるからといって、大きいほうが総額まで安くなるわけではありません。10kWhを10.7万円/kWhで買えば約107万円、5kWhを15.0万円/kWhで買えば約75万円で、支払う額は大きいほうが多い(当サイトの割り算です)。ここで比べているのは1kWhあたりの割高さだけです。資料も「案件によりkWhあたりの工事費はばらつきが大きい」と付け加えています。
なお、カタログに書かれた容量がそのまま使えるわけではない点は別記事にまとめました。容量の考え方は蓄電池の実効容量を先に読むと、この単価の意味が変わります。
蓄電池の見積もりを取る場合
容量や保証の条件を揃えて比較するには、複数社の見積もりが必要です。
【タイナビ蓄電池】蓄電池の一括見積り比較!完全無料で最大5社![]()
広告。どちらも申し込みは各社の公式サイトで行われます。紹介される施工会社や連絡方法はサービスごとに異なります。
補助金を使わない場合の水準は、別に書かれている
上の数字は補助事業のデータです。補助を使わない場合について、検討会は事業者ヒアリングの結果を分けて書いています。
また、事業者ヒアリングより、補助事業以外で家庭用蓄電システムを導入する場合、設備費は15~20万円/kWh、工事費は2万円/kWh程度が標準的な水準となることがわかった。
設備費で見て、補助事業の11.1万円/kWhに対し、補助事業以外は15〜20万円/kWh。工事費も1.0万円/kWhに対して2万円/kWh程度とされています。同じ資料のなかで、2倍近い開きが並んでいることになります。
この差については、資料自身が理由を書いています。ヒアリング結果の欄には「補助金利用事業者は、補助上限金額に合わせて申請を行うため概ね推計値程度になると思われる」とあり、補助事業の価格には上限が効いていると読めます。実際、補助の要件はこう定められています。
環境省、経産省の補助事業では、導入価格(設備費+工事費・据付費)が蓄電容量1kWhあたり14.1万円以下であることが要件。
設備費と工事費を足して14.1万円/kWh以下、という線が引かれている。補助事業のデータが11.1+1.0で12.1万円/kWhに収まっているのは、この上限の内側で価格が形成されているからだと読めます(当サイトの整理です)。国の蓄電池向け補助そのものの状況は補助金の一覧に整理しています。
2030年度の目標価格は7万円/kWh
国は家庭用蓄電池の価格に目標値を置いています。資源エネルギー庁の資料にはこうあります。
また、投資回収が可能なレベルを実現するため、2030年度の目標価格として家庭用は7万円/kWh、業務・産業用は6万円/kWh(ともに工事費込み)と設定。
同じページには、家庭用の価格として「約19万円/kWh(工事費含む・税抜)」というラベルが並んでいます。7万円/kWhという目標は、そこから半分以下にするという意味になります。目標値の算出根拠も注記されていて、電気の購入価格27〜29円/kWh、太陽光4.7kW、売電6〜10円/kWh、蓄電容量3〜13kWhで10年または15年で投資回収するケースから設定した、と書かれています。
ここで注意したいのは、7万円/kWhが今の相場ではないことです。あくまで2030年度に向けた目標であり、現時点の家庭用の公表値は上に並べた11.1万円/kWhや15〜20万円/kWhのほうです。
この数字を自分の見積もりに当てるとき
ここから先は当サイトの整理で、公的な基準ではありません。手元の見積もりを上の数字と比べるなら、順番は次のようになります。
- 見積もりの総額を蓄電容量で割り、1kWhあたりに直す。機器代と工事費が分かれているなら別々に割る
- その単価を、5kWh未満なら15.0万円/kWh、5kWh以上なら10万円台という区分と照らす。容量帯を無視した比較は意味が薄い
- 補助金を使うのか使わないのかで、比べる相手を変える。補助なしなら設備費15〜20万円/kWhが資料上の標準
- カタログの容量ではなく初期実効容量で割り直してみる。同じ総額でも単価の見え方が変わる
- 単価が安く見えても、容量が大きければ総額は増える。総額と単価は必ず両方見る
当サイトは蓄電池を購入した立場ではなく、価格を実測した経験もありません。ここに書いたのは公表資料に載っている数字と、その区分の読み方だけです。実際の価格は機種・工事条件・時期で動きます。
まとめ
家庭用蓄電池の1kWhあたり単価は、公的資料のうえでは三重に分かれています。系統用か家庭用かという設置形態の区分、5kWh未満かそれ以上かという容量の区分、補助事業か否かという購入経路の区分。この3つを揃えないと、数字どうしを比べたことになりません。
次に見るなら、容量の決め方は蓄電池の選び方、太陽光とセットにするか後から足すかは蓄電池の後付け、見積もりの取り方は蓄電池の見積もりの取り方が対応します。設置場所の制約は消防への届出、太陽光側の費用は費用のページ、複数社を比べる手順は見積もりのページにまとめています。
蓄電池の見積もりを比較する
本文で挙げた確認項目を手元に置いたうえで、複数社の見積もりを条件を揃えて比べてください。
【タイナビ蓄電池】蓄電池の一括見積り比較!完全無料で最大5社![]()
広告。どちらも申し込みは各社の公式サイトで行われます。紹介される施工会社や連絡方法はサービスごとに異なります。
この記事の情報について
本文の数字はすべて、下記の公表資料から直接取得したものです。取材や実測に基づく記述は含んでいません。「当サイトの整理」「当サイトの割り算」と書いた箇所は当サイトの解釈・計算であり、公的機関の見解ではありません。
- 経済産業省 資源エネルギー庁「2024年度 定置用蓄電システム普及拡大検討会の結果とりまとめ」2025年3月7日PDF(家庭用の価格水準・容量区分別コスト・事業者ヒアリング・系統用の価格・補助要件14.1万円/kWh)/確認日 2026年8月8日
- 経済産業省「定置用蓄電システム普及拡大検討会」ページ(最新は2025年度第1回・2025年7月22日)/確認日 2026年8月8日
- 資源エネルギー庁「再エネ大量導入時代における分散型エネルギーシステムのあり方」2024年9月30日 資料2PDF(2030年度の目標価格7万円/kWh)/確認日 2026年8月8日
確認していない範囲は次のとおりです。2024年度・2025年度の家庭用蓄電システム価格は、今回確認した範囲では公表されていません(2025年度検討会は2025年7月22日に第1回が開かれた段階で、とりまとめは未公表)。容量区分別グラフに添えられた標準偏差の値、「約19万円/kWh」がどの年度の値か、資料内でとりまとめ15ページの「電池部分が5.6万円/kWh」と11ページの内訳が食い違う理由、価格が税込か税抜か、メーカー別・機種別の価格については確認できていません。メーカー別の価格を示した公的資料は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。実際の購入価格は個別の条件で変わります。判断が必要な場合は複数社の見積もりを取り、自治体の窓口で制度を確認してください。
ソーラー資料室