家庭用の蓄電池を置くとき、消防への届出は必要なのか。
国が示す基準では、蓄電池容量20kWh以下は届出の対象から外れています。2024年1月1日からです。
ただし、これには前提があります。実際に適用されるのは、自治体ごとに定められた火災予防条例です。この記事では、何がどう変わったのか、そして自分の地域で何を確認すればいいのかを整理します。
2023年5月に公布、2024年1月に施行
消防庁が2023年5月31日に出した通知(消防予第306号)で、蓄電池設備に関する消防法令が見直されました。施行は2024年1月1日です。
変わったのは、規制の対象を測る単位です。
現行の対象火気省令においては、4,800 アンペアアワー・セル未満の蓄電池設備を規制の対象から除いているが、今回、規制の対象となる蓄電池設備を、電気エネルギー貯蔵システムの安全性を分類する際に一般的に用いられている蓄電池容量(キロワット時)を用いて区分することとし、蓄電池容量が 10 キロワット時以下のもの及び蓄電池容量が 10 キロワット時を超え 20キロワット時以下のものであって出火防止措置が講じられたものとして消防庁長官が定めるものを規制の対象から除くこととしたこと
旧基準の「アンペアアワー・セル」は、家庭用蓄電池のカタログには載っていない単位です。自分の製品が該当するのかを消費者が判断するのは、実質的に不可能でした。
新しい基準は「kWh」です。カタログに書いてある単位なので、自分で見当がつけられます。ここが、この改正のいちばん実用的な変化です。
「10kWh」と「20kWh」は別の話
この改正を扱った記事では「10kWh以下なら届出不要」と書かれていることがあります。10kWhと20kWhは、それぞれ違うものの基準です。
届出については、通知にこう書かれています。
そのほか、火を使用する設備等の届出の対象から、蓄電池容量が 20 キロワット時以下の蓄電池設備を除くこととしたこと(第 44 条関係)。
届出の線引きは20kWhです。10kWhのほうは「対象火気省令」という別の省令の話で、設置場所の位置・構造・管理をどうするかの基準です。届出が要るかどうかとは別の論点です。
「火災予防条例(例)」は国が示すモデル
ここが重要な点です。上の20kWhは、「火災予防条例(例)」という文書の中身です。
「(例)」は国が示すひな形という意味です。この通知の宛先は各都道府県知事と各指定都市市長で、この部分は「火災予防条例(例)の一部改正に関する事項」として書かれています。実際に適用されるのは、自治体が定める火災予防条例のほうです。
したがって、「20kWh以下なら全国どこでも届出不要」とは言えません。自分の地域の条例がどうなっているかを確認する必要があります。
自分の場合を確かめる3ステップ
- 製品のカタログで蓄電池容量(kWh)を確認する。20kWhを大きく下回っていれば、国のひな形では届出の対象外
- 設置場所を管轄する消防署のサイトで「電気設備設置届」を探す。蓄電池設備の欄に容量の除外規定が書かれていることがある
- 分からなければ管轄の消防署に電話で聞く。「蓄電池容量◯kWhの家庭用蓄電池を設置するが、届出は必要か」と聞けば足りる
東京都の場合(確認できた例)
東京消防庁の「電気設備設置(変更)届出書」のページには、届出の対象となる電気設備として、こう書かれています。
蓄電池設備(蓄電池容量が20キロワット時以下のものは除きます。)
同じページのお知らせ欄には「令和5年12月14日 火災予防条例改正に伴い、蓄電池設備の概要表を更新しました」とあります。東京都では条例改正が反映されていることが、公式ページで確認できます。
東京都以外の自治体については、この記事では確認していません。確認していないだけであり、対応していないという意味ではありません。
「蓄電池容量」がどの数値を指すのかは、通知に書かれていない
蓄電池のカタログには、複数の容量が載っていることがあります。定格容量、初期実効容量、初期停電時放電容量などです。これらは同じ数字ではありません。
通知には、20kWhをどの容量で判断するのかまでは書かれていません。20kWhに近い容量の製品を検討している場合は、管轄の消防署に確認してください。
「家庭用蓄電池の何割が20kWhを超えるか」を示す公的な統計はありません。一般論で判断せず、自分が検討している製品のカタログで容量を確認してください。
届出が必要な場合、何が起きるか
東京都の例で見ると、こうなります。手続きの内容は自治体によって異なります。
| 項目 | 内容(東京消防庁の場合) |
|---|---|
| 期限 | 設置する7日前までに管轄消防署へ |
| 届出者 | 設備の関係者(所有者・管理者・占有者)。工事施工者ではないと明記されている |
| 添付書類 | 設備の概要表、配置図、仕様書、設置場所の平面図・展開図、室内仕上表、ダクトの系統図 |
| 検査 | 届出後、使用開始前に消防署の検査(内容により省略される場合あり) |
| 方法 | 電子申請、窓口、郵送 |
届出者は所有者です。東京消防庁のページには「電気設備の工事施工者ではありませんのでご注意ください」とわざわざ書かれています。書類を誰が作るにしても、届出書に名前が載るのは設置する人です。
届出や検査に手数料がかかるかどうかは、この記事では扱いません。自治体によって異なるためです。
経過措置がある
新しく規制の対象になるもののうち、施行時にすでに設置されていたものと、施行日から2年を経過する日までに設置されたものについては、省令の第2章の規定を適用しないという経過措置が置かれています。
施行は2024年1月1日なので、2026年8月時点では、この2年の期間はすでに終わっています。これから設置する場合、この経過措置は使えません。
業者に確認すること
ここからは、上記の内容をもとに当サイトが整理したものです。公的な基準ではありません。
| 確認すること | なぜ |
|---|---|
| 設置する製品の蓄電池容量は何kWhか | 20kWhが届出の線引き。カタログで確認できる |
| この自治体で消防への届出が必要か | 条例は自治体ごと。業者が答えられないなら管轄消防署へ |
| 必要な場合、誰が届出をするか | 届出者は所有者。代行してもらうなら誰が書類を作るかを決めておく |
| 検査の有無と、その日程 | 使用開始前に検査が入る場合がある。工期に影響する |
「消防は関係ありません」とだけ言われたら、根拠を聞いてください。容量が20kWh以下だからなのか、その自治体の条例がそうなっているからなのか、で意味が違います。
蓄電池の見積もりの取り方は 蓄電池の見積もりの取り方|太陽光とセットか、後からか、見積もりを取る前に決めておくことは 太陽光の見積もりを取る前に決めておく5つのこと にまとめています。
蓄電池の全体像は 家庭用蓄電池を選ぶ前に|容量・価格・補助金・消防の基準 にまとめています。
まとめ
- 国が示す基準では、消防への届出の対象から蓄電池容量20kWh以下が外れた。公布2023年5月31日、施行2024年1月1日
- 「10kWh」と「20kWh」は別の基準。届出の線引きは20kWh。10kWhは省令上の位置・構造の規制の話
- 旧基準は「4,800アンペアアワー・セル」で、カタログに載っていない単位だった。kWhになったことで自分で確認できるようになった
- 実際に適用されるのは自治体ごとの火災予防条例。東京都は反映済みであることを公式ページで確認できた
- 「蓄電池容量」がどの数値を指すかは通知に書かれていない。20kWhに近い場合は管轄消防署に確認する
蓄電池の費用や補助金については 太陽光・蓄電池の補助金は今どうなっている?、太陽光本体の費用は 太陽光の費用の推移|安くなったのはパネルだけ にまとめています。
この記事の情報について
以下を2026年8月7日に確認したものです。通知はPDF本文を、東京消防庁のページはHTMLを、それぞれ直接確認しています。
- 消防庁次長「消防予第306号」(令和5年5月31日)
消防法施行規則及び対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令の一部を改正する省令等の公布等について。引用は3ページ「第二 1」および5ページ「第六 1」 - 東京消防庁「電気設備設置(変更)届出書」
「業者に確認すること」の整理は当サイトによるものであり、公的な基準ではありません。
東京都以外の自治体の火災予防条例は確認していません。また、7号告示が定める「出火防止措置」の具体的な内容には立ち入っていません。個別の設置について届出が必要かどうかは、管轄の消防署にご確認ください。
この記事は公開情報を整理したものです。当サイトが実際に蓄電池を設置し届出を行った立場で書いたものではありません。
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