太陽光発電は年々安くなっている。そう思われています。
実際は、2022年を底に3年連続で上がっています。経産省の資料に、そう書かれています。
この記事では、住宅用太陽光の設置費用が実際どう動いてきたかを、経産省 調達価格等算定委員会の資料(2026年1月7日)から確認します。費用の内訳まで見ると、何が安くなって何が安くなっていないかがはっきり分かります。
以下、金額はすべて「万円/kW」(1kWあたりの金額)で書きます。4kWのシステムなら4倍、5kWなら5倍です。「システム費用」はパネル・パワコン・架台・工事費などを合わせた設置費用の総額を指します。
新築の平均は2022年が底だった
住宅用太陽光(10kW未満)を新築時に設置した場合のシステム費用の平均値です。
2012年の43.1万円/kWから10年かけて下がり、2022年の26.9万円/kWが底です。そこから2023年28.3、2024年28.7、2025年28.9と上がっています。2022年比で2.0万円/kW、率にして7.4%の上昇です(この計算は当サイトによるもの)。
これは当サイトの解釈ではありません。資料に、こう書かれています。
住宅用太陽光(10kW未満)のシステム費用は新築案件・既築案件ともに低下傾向にあるが、直近2023年度以降はやや増加傾向にある。
新築案件について、設置年別に見ると、2025年設置の平均値は28.9万円/kW(中央値29.4万円/kW)となり、2026年度の想定値(25.5万円/kW)を上回り、2024年設置より0.2万円/kW(0.6%)、2023年設置より0.5万円/kW(1.9%)増加した。
4kWのシステムなら、2022年に設置した人と2025年に設置した人で平均8万円ほどの差になります(28.9−26.9=2.0万円/kW × 4kW。当サイトの計算)。
安くなったのはパネル。工事費は上がっている
同じ資料に、2025年に新築設置された案件の費用内訳が出ています。
ここで比較したいのが、4年前の内訳です。2022年2月の同じ委員会の資料には、2021年に新築設置された案件について「太陽光パネルが約60%、工事費が約25%を占める」と書かれています。2025年はパネル約47%、工事費約29%です。
なお2021年設置の平均値は、より新しい資料では28.0万円/kWではなく27.1万円/kWと示されています(調達価格等算定委員会 第110回・2026年1月7日の事務局資料)。0.9万円/kWの差があります。FITの定期報告データが後から積み上がり、集計し直されたためと考えられますが、委員会が改定の理由を説明した記述は確認していません(ここは当サイトの整理です)。
この記事で2022年2月の資料の数字を使っているのは、内訳の比率(パネル約60%・工事費約25%)がその資料にしか載っていないためです。年ごとの平均額そのものを追うときは太陽光発電の費用はいくらかの系列表(新築2021年は27.1万円/kW)をご覧ください。
| 2021年設置 | 2025年設置 | |
|---|---|---|
| 平均 | 28.0万円/kW | 28.9万円/kW |
| パネルの比率 | 約60% | 約47% |
| パネルの金額(概算) | 約16.8万円/kW | 13.5万円/kW |
| 工事費の比率 | 約25% | 約29% |
| 工事費の金額(概算) | 約7.0万円/kW | 8.5万円/kW |
パネルは下がり、工事費は上がっています。その結果、全体としては下がっていません。
総額が上がっているのは、集計時点の違いによるものではありません。最新資料の同一系列で見ても、2021年27.1万円/kW → 2025年28.9万円/kWと上がっています。総額が上がり、その中でパネルの比率が下がった。だからパネル以外が増えたことになります。
「パネルの価格が下がった」というニュースは事実です。ただしパネルは費用の半分以下で、残りは工事費・パワコン・架台です。パネルが安くなっても、設置費用の総額はその分だけしか下がりません。
金額(概算)の行は、公表されている比率から当サイトが計算したものです。2021年の金額は資料に直接は書かれていません。また、2021年の平均28.0万円/kWは2022年時点の集計値で、最新資料のグラフにある2021年の値(27.1万円/kW)とは異なります。定期報告データは後から積み上がるため、集計時点が違うと同じ設置年でも数字が変わります。この2つを引き算しないでください。
工事費が上がった理由は、資料に書かれていない
調べたかぎり、住宅用の工事費がなぜ上がったのかを説明した公的資料は見つかりませんでした。理由を推測することはできますが、この記事では書きません。
事業用(10kW以上)については、2022年の資料に記述があります。
設置年別に資本費の構成変化を見ると、パネル費用は低減している(2013 年から 2021 年までに▲47%)一方で、工事費は直近、上昇傾向にある(2013 年から 2021 年まで+7%)
これは事業用の数値であり、住宅用の話ではありません。ただし「パネルは下がり、工事費は下がっていない」という構造が、住宅用に限った話ではないことは分かります。
「25.5万円/kW」という数字を見たときの注意
経産省の資料には25.5万円/kWという数字も出てきます。これは実績ではありません。
| 数字 | 意味 |
|---|---|
| 28.9万円/kW | 2025年に新築設置された案件の実績の平均 |
| 25.5万円/kW | 2026・2027年度の売電価格を計算するための想定値 |
25.5万円/kWは、売電価格(制度上の呼び名は「調達価格」)を決めるときの計算前提です。「これくらいで設置できるはず」という前提に基づいて売電価格が決まっているということであり、実際にその金額で設置できるという意味ではありません。
資料自身が「2026年度の想定値(25.5万円/kW)を上回り」と書いています。実績のほうが3.4万円/kW高い状態です。
この2つを混同して「国が25.5万円/kWと言っている=それが相場」と書いてしまうと、読者の予算感が3万円/kWずれます。
では、どこに下げる余地があるのか
ここからは、内訳から読み取れることを当サイトが整理したものです。公的な基準ではありません。
まず平均で1.7万円/kWの値引きが計上されているという事実があります。4kWなら6.8万円です。値引きが平均値に表れているということは、値引きは例外ではなく、標準的に行われているということです。最初に提示された金額が最終価格とは限りません。
ただし、これは平均です。個々の案件で値引きがいくらだったかの分布は、この資料からは分かりません。自分の場合にいくら引けるかを示す数字ではありません。
もう一つ、工事費が8.5万円/kW(総額の約29%)を占めているという事実があります。機器と違って、工事費は型番で比較できません。見積書で工事費が「一式」とだけ書かれていると、この約3割が比較できない状態になります。
機器・工事費・値引きのどこに差があるかは、同じ条件で複数社の見積もりを並べないと分かりません。
自分の見積もりを28.9万円/kWと比べる
手元に見積書があるなら、次の計算で比べられます。
見積総額(税込・補助金を引く前) ÷ 設置容量(kW) = ◯万円/kW
たとえば総額130万円・4.5kWなら、130÷4.5=28.9万円/kW。ちょうど平均です。
ただし、この平均は新築設置のものです。既築(後付け)の2025年の平均は30.1万円/kWで、こちらのほうが高くなっています。なぜ高いのかは資料に書かれていません。後付けの場合は30.1万円/kWと比べてください。
平均より高いことがそのまま「高すぎる」を意味するわけではありません。容量が小さいほど1kWあたりは高くなりますし、屋根の形状でも変わります。判断するには、同じ条件で他社の見積もりと並べる必要があります。
複数社から見積もりを取る方法は 太陽光の一括見積もりは何社から電話が来る?、何社取るべきかは 太陽光の相見積もりは何社取るべき? にまとめています。比べる前に決めておくことは 見積もりを取る前に決めておく5つのこと にあります。
この記事の数字の前提
使った数字には、次の前提があります。これを外して読むと誤解します。
- 2025年の集計は1〜8月に設置された分(N=34,163)。通年ではありません。年末までの数字が出れば変わる可能性があります
- 2015年以降は定期報告データ(FIT制度で発電を始めた人が国に提出する費用の報告)が元になっています。2014年までは太陽光発電協会の補助金交付実績データで、出所が違います
- 新築設置の数字です。既築(後付け)は別の系列で、2024年32.1万円/kW、2025年30.1万円/kWと動きが違います
- 容量別(4kWでいくら等)の公的統計は存在しません
「太陽光の費用は◯万円」と一つの数字で語れないのは、この前提の違いがあるためです。
費用の全体像は 太陽光・蓄電池の費用ガイド|公的資料で確認できる数字だけ にまとめています。
まとめ
- 新築の平均は2022年の26.9万円/kWが底。2025年は28.9万円/kWで3年連続の上昇
- 経産省の資料自身が「直近2023年度以降はやや増加傾向にある」と書いている
- 安くなったのはパネル。比率は2021年の約60%から2025年は約47%へ。工事費は約25%→約29%に上昇
- 25.5万円/kWは売電価格を計算するための想定値。実績の平均28.9万円/kWとは別物
- 2025年の数字は1〜8月設置分。通年ではない
補助金が使えるかどうかで実質の負担は変わります。今どの制度が使えるかは 太陽光・蓄電池の補助金は今どうなっている? にまとめています。
この記事の情報について
以下を2026年8月7日に確認したものです。PDF本文を直接確認して数値を照合しています。
- 経済産業省 第110回 調達価格等算定委員会(2026年1月7日開催)
資料1「太陽光発電について」スライド82・83・87・88(PDFファイルの83・84・89・90ページ目) - 経済産業省「令和4年度以降の調達価格等に関する意見」(2022年2月4日)
10ページ、21ページ
「どこに下げる余地があるのか」の整理は当サイトによるものであり、公的な基準ではありません。金額の概算(2021年のパネル・工事費)も当サイトの計算です。この記事は公開情報を整理したものです。当サイトが実際に太陽光発電を設置した立場で書いたものではありません。
費用の見通しについては書いていません。今後上がるか下がるかを示した公的な資料は確認できませんでした。
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