蓄電池の見積書やカタログには、聞き慣れない言葉が並びます。ここで大事なのは、意味を覚えることよりもその言葉に公的な定義があるかどうかを知ることです。定義があるものは横並びで比較でき、ないものは各社の言い方にすぎません。その区別をつけて並べます。
公的な定義があるもの
業界団体の性能表示ラベルと、JISの規格に載っている言葉です。カタログに数字が書かれていれば、他社と比べられます。
| 用語 | 意味 | 比較に使えるか |
|---|---|---|
| 蓄電池容量 | 蓄えられる電力量。カタログの「10kWh」はこちら | 使える |
| 初期実効容量 | 新品の状態で実際に使える電力量。指針の記載例では5.0kWhに対し4.5kWh | 使える |
| 初期停電時放電容量 | 新品で停電時に満充電から利用可能な電力量 | 使える |
| システム容量利用率 | 温度ごとの効率。記載例では−10℃で68.8%、25℃で90.0% | 使える |
カタログに蓄電池容量と初期実効容量の両方が書かれているかは、最初に見る項目です。表示は任意なので、載っていない製品もあります。詳しくは実効容量の記事にまとめました。
ラベルに項目がないもの
比較用のラベルは11項目ありますが、そこに定格出力や自立出力にあたる項目はありません。カタログ記載指針では推奨項目として挙げられていますが、ラベルでは横並びに比較できません。
停電時に同時に何が動くかを決めるのは容量ではなく出力です。ラベルにないため、メーカーのカタログやQ&Aを自分で当たることになります(停電時に何が動くかの記事)。
メーカーの用語で、公的な定義がないもの
売り場でよく使われる言葉の多くは、こちらに入ります。各社が自社の製品を説明するために使っている言葉で、他社と同じ意味とは限りません。
| 用語 | メーカーの説明 |
|---|---|
| 全負荷対応分電盤 | 停電時に家庭全体に電力を供給する分電盤 |
| 重要負荷対応分電盤 | 停電時に使用するコンセントにのみ電力を供給する方式の分電盤 |
| 自動切替分電盤(開閉器盤) | 停電時や復電時に系統側と蓄電池側を自動で切り替える電気設備 |
| 非常時安心設定 | 蓄電池容量の一部をあらかじめ停電時のために残しておく設定 |
| SOC | 電池の充電状態。満充電100%、完全放電0% |
| SOH | 電池の健全度。初期の満充電容量に対する現状の割合 |
原文はこうです。
全負荷対応分電盤: 停電時に家庭全体に電力を供給する分電盤のこと。停電時に使用するコンセントにのみ電力を供給する分電盤は、重要負荷対応分電盤という。
SOH: 電池の健全度や劣化状態を表す指標のこと。初期の満充電容量に対して現状(劣化状態)の満充電容量の割合(%)のこと。
ここで注意が要ります。当サイトが調べた範囲では、「全負荷型」「特定負荷型」という製品分類そのものに公的な定義はありませんでした。上の「全負荷対応分電盤」はメーカーの用語集にある言葉で、業界団体のラベルには該当する項目がありません。経緯は全負荷型と特定負荷型の記事にまとめました。
型の呼び方も各社で違う
「単機能型」「ハイブリッド型」も、業界団体の資料には出てこない呼び方です。JEMAは「シングル型」「マルチ入力型」と呼びます。中身はパワーコンディショナの構成の違いです(単機能型とハイブリッド型の記事)。
運転モードの名前も、公的な定義がありません。同じメーカーの用語集から。
グリーンモード: ニチコンの蓄電システムにおいて太陽光発電を併用した場合、太陽光発電が家庭負荷より大きく、余剰となる電力があるとき、蓄電システムに充電する動作モードのこと。
売電モード(経済モード): ニチコンの蓄電システムにおいて太陽光発電を併用した場合、太陽光発電が家庭負荷より大きく、余剰となる電力があるとき、電力会社へ売電する動作モードのこと。
説明の冒頭が「ニチコンの蓄電システムにおいて」で始まっています。自社製品についての説明だと明示しているということです。名称も数もメーカーで違う点は運転モードの記事に整理しました。
太陽光まわりで出てくる言葉
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 逆潮流 | 電流が系統側に逆流すること |
| 押し上げ | 太陽光発電電力等を蓄電池電力で補う(押し上げる)機能 |
| トライブリッド蓄電システム | 太陽光・蓄電池・EVの3者の電力を家庭で利用できるシステム(メーカーの呼称) |
| V2Hシステム | EVの蓄電池から家庭へ電気を供給するシステム |
「押し上げ」については、原文にモードの説明もあります。
押し上げ 有り/無し: 押し上げとは、太陽光発電電力等を蓄電池電力で補う(押し上げる)機能のこと。押し上げ有り⇒太陽光発電等と家庭用蓄電システムを併設していて、家庭用の電力を蓄電池から優先して供給する動作モード 押し上げ無し⇒外部太陽光発電等の電力を優先して供給する動作モード(選択可能なモデルの場合)
V2HについてはV2Hの記事にまとめています。
設置まわりで出てくる言葉
| 用語 | 意味 | 関連記事 |
|---|---|---|
| 単相三線式 | 住宅で一般的な配線方式。100Vと200Vの両方が使える | 設置場所 |
| 自立運転 | 停電時に系統から切り離して電気を供給する動作 | 停電時の太陽光 |
| パワーコンディショナ | 直流と交流を変換する機器。パワコンと略される | パワコン |
| 施工ID | メーカーの施工研修の修了者に発行される番号 | 工事は誰がするのか |
| 卒FIT | 固定価格買取の期間が終わること | 卒FIT |
用語を聞くときのコツ
ここから先はこのサイトの整理で、公的な基準ではありません。
- 説明で出てきた言葉が、ラベルの項目にあるかを確認する。あれば数字で比較できます
- ないなら「他社では何と呼びますか」と聞く。呼び方が違うだけのことがあります
- 「全負荷」「特定負荷」は型名ではなく、どの回路に給電するかで書いてもらう
- モードの名前は前提とセットで聞く。太陽光の有無とFITの状況で最適が変わります
- カタログの数字は、測定条件とセットで見る(例: 騒音値は正面1mでの値)
見積書の読み方は蓄電池の見積もりの見方、はじめて調べる方の順番は導入までの流れの記事にまとめています。蓄電池の記事の一覧は蓄電池のまとめにあります。
まとめ
- 用語は「公的な定義があるもの」と「メーカーの言い方」に分かれる
- 定義があるのは蓄電池容量・初期実効容量・初期停電時放電容量・システム容量利用率など
- ラベルの11項目に出力にあたる項目はない。停電時の性能はラベルで比べられない
- 「全負荷型/特定負荷型」「単機能型/ハイブリッド型」に公的な定義は見つからなかった
- 運転モードの名前も各社の用語。メーカーの用語集も「当社の蓄電システムにおいて」と断っている
- 比較に使えるのは定義がある言葉の数字だけ
言葉が分からないときは、意味を聞くより「それはカタログのどの項目ですか」と聞くほうが早いことがあります。
この記事の情報について
出典は、一般社団法人日本電機工業会(JEMA)「蓄電システム 性能表示ラベルのススメ」および「低圧蓄電システムのカタログ等記載事項 作成指針」(2023年3月22日制定。ラベルの項目、初期実効容量とシステム容量利用率の記載例。確認日2026年8月7日)、ニチコン株式会社「用語集」(分電盤の種類、非常時安心設定、SOC・SOH、モード、押し上げ、逆潮流、V2H関連。確認日2026年9月6日)です。用語を「公的な定義があるもの」と「メーカーの用語」に分ける整理はこのサイトによるもので、公的な分類ではありません。当サイトは施工・販売を行っておらず、記載は公表資料の読み取りです。
確認していない範囲: JIS C 4413/C 4414の本文(有償規格)は確認していません。引用したメーカー以外の用語集、同じ言葉が他社で違う意味で使われていないかも確認していません。ここに挙げた以外の用語(施工や電気工事の専門用語など)は網羅していません。用語の公的な定義の有無は、今回確認した資料の範囲での判断です。
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