「蓄電池は停電で何時間使えるのか」。この質問に、メーカーの公式Q&Aは「一概にはお答えできません」と答えています。そのうえで、前提を置いた目安の時間は公表されています。ただ、時間を計算する前に確かめておくことがあります。停電時には、容量に関係なく動かない家電が決まっているからです。
メーカーは「一概にはお答えできません」と書いている
ニチコンの単機能蓄電システム(ESS-U5シリーズ)のQ&Aに、そのままの問答があります。
使用電力と蓄電池残量によるため、一概にはお答えできません。保証値ではありませんが、7.7kWh蓄電池が満充電の場合、冷蔵庫、TV等の合計消費電力が430W程度だった場合、約15時間継続してお使いいただけます。
同社のトライブリッド蓄電システム(ESS-T5/T6シリーズ)のQ&Aでは、同じ430Wという前提で、容量ごとの目安が並べられています。
使用電力と蓄電池残量によるため、一概にはお答えできません。保証値ではありませんが、蓄電池が満充電で、家庭の合計消費電力が430Wの場合、7.4kWhで約14時間、9.9kWhで約20時間、14.9kWhで約29時間、19.9kWhで約40時間継続してお使いいただけます。
430Wという前提が置かれていることが要点です。冷蔵庫とテレビを足した程度の消費電力で、エアコンも電子レンジも入っていません。前提が変われば時間も変わる。だから「一概には答えられない」と書かれています。容量そのものの読み方は実効容量の記事にまとめています。
停電時に動かない家電が決まっている
同じQ&Aには、停電時に接続する家電の分類が載っています。時間の計算より先に見るべきはこちらです。
| 分類 | 判定 | 例 |
|---|---|---|
| 生命に関わる家電製品 | 接続禁止 | 医療機器等 |
| 安全に関わる機器 | 接続禁止 | エレベーター等 |
| 途中で電源が途切れると不具合を生じる家電製品 | 接続禁止 | デスクトップ型パソコン等 |
| 特定の電気波形(半波整流)で動作する家電製品 | 動作しない場合がある | ドライヤー、温水洗浄便座、電気カーペット等 |
| 突入電流が大きい家電製品 | 動作しない場合がある | 掃除機、遠赤外線ヒーター、洗濯機等 |
| 消費電力(動作電流)が大きい家電製品 | 動作しない場合がある | 電子レンジ、電気ストーブ等 |
| 保温機能がある家電製品 | 動作しない場合がある | 炊飯器、温水洗浄便座等 |
洗濯機、掃除機、電子レンジ、炊飯器、ドライヤー。停電のあとに使いたくなる家電がひととおり「動作しない場合がある」に入っています。理由も書かれています。
蓄電システムが自立運転を停止し、再起動を繰り返す場合があります。その際は使用している家電製品のコンセントをいくつか抜いてください。
止まるのは電池が切れたからではなく、機器が保護のために自分を止めるからです。ドライヤーには補足もあり、弱モードでは動かず強モードなら動く場合がある、とされています。容量を大きくしても、この挙動は変わりません。
容量とは別に、出力の上限がある
同時に使える量を決めているのは、容量(kWh)ではなく出力(kWまたはkVA)です。ESS-U5シリーズの自立出力は機種により4.0kVAまたは5.9kVA、トライブリッドのESS-T5シリーズは停電時5.9kVAと公表されています。蓄電池側の放電はさらに小さく、機種によっては停電時4.0kVAです。
販売終了品のページですが、コンセント側の条件がより具体的に書かれた注記もあります。
非常時兼用コンセントは、単相3線式AC100/200V仕様です。連系時で片相あたり合計29.5A(2950W)未満の機器を接続してください。エアコンやIH機器などの200V機器も接続可能ですが、接続に条件がある場合があります。また一度に多くの機器をご使用になると保護のために出力が頻繁に停止し、機器の故障の原因となることがあります。
片相あたり2,950W未満という条件が付いています。家全体につながる構成でも、同時に取り出せる量には上限がある。給電の範囲そのものの話は全負荷と特定負荷の記事で扱っています。太陽光だけで自立運転する場合の上限は1,500Wで、こちらは太陽光の停電時の記事にまとめました。
業界のラベルでは、出力を比べられない
日本電機工業会(JEMA)の性能表示ラベルには、停電に関する項目が2つあります。
初期停電時放電容量/新品で停電時に満充電から利用可能な電力量/値が大きいほど、電気製品を長く動かせる
もう1つがシステム容量利用率(停電時)で、こちらは周囲温度ごとの効率です。停電が冬や真夏に起きることを考えると、この温度別の値は実用的な情報になります。
ただし、ラベルの11項目に定格出力や自立出力に当たる項目はありません。ラベルで比べられるのは「どれだけ長く動かせるか」であって、「何が動くか」ではない。出力はカタログの仕様表で確認する必要があります(編集部の整理です)。
初期設定のままだと、3割を残して止まる
もう1つ、使える量を左右する設定があります。ESS-U5シリーズのQ&Aにはこうあります。
蓄電池残量の形で電池に残す容量を30%から100%まで10%刻みで設定可能です。また、貯めた電気を全て使い切る「オフ」(残量0%)を選択することも可能ですが、非常時に電気がない状態(0%)になってしまう場合がありますので選択の際はご留意ください。工場出荷時の設定は30%です。
停電に備えて残量を確保する設定が、出荷時から30%で入っている、ということです。普段の節電で使える量はその分減り、停電時には残っていた分から使い始めます。トライブリッドのシリーズでは100%と20〜70%の設定が可能とされており、刻みや下限は製品ごとに違います。
見積もりのときに確認する5項目
ここから先は編集部の整理で、公的な基準ではありません。
- 停電中に動かしたい家電を書き出し、そのうち動作しない場合があるに該当するものがないかを、機種のQ&Aや取扱説明書で確認する
- 自立運転時の出力(kVA)を聞く。容量(kWh)と混同しない。片相あたりの上限があるかも確認する
- 200V機器を使う予定があるなら、200V対応と接続の条件を仕様書で確認する
- 停電用に残す残量の初期設定が何%かを聞く。設定を変えられる範囲もあわせて確認する
- 「何時間使えるか」を聞くときは、前提の消費電力をセットで出してもらう。前提のない時間には意味がありません
必要な容量そのものの決め方は何kWh必要かの記事、機器がどれだけ長く使えるかは寿命の記事に整理しました。見積書での確認の仕方は蓄電池の見積もりの見方にまとめています。
まとめ
- メーカーは停電時の使用時間について「一概にはお答えできません」と明記したうえで、前提つきの目安を公表している
- 公表されている目安の前提は合計消費電力430W。冷蔵庫とテレビ程度で、エアコンや電子レンジは含まれない
- 停電時に接続できない家電と、動作しない場合がある家電が分類されている。洗濯機・掃除機・電子レンジ・炊飯器・ドライヤーは後者に含まれる
- 同時に使える量を決めるのは容量ではなく出力。自立出力は機種により4.0kVAや5.9kVAで、コンセント側に片相2,950W未満という条件が付く例もある
- JEMAのラベル11項目に出力の欄はない。ラベルで比べられるのは停電時の容量と温度別の効率まで
- 停電用に残す残量は工場出荷時で30%という例がある。普段使える量はその分減る
停電時に何が動くかは、家の配線と機種の仕様で決まります。蓄電池の見積もりの場で「この家で停電時に何が動くか」を書面にしてもらうのが確実です。IH・エコキュートがある家はオール電化の記事もあわせてご覧ください。蓄電池の記事の一覧は蓄電池のまとめにあります。
この記事の情報について
以下を2026年9月6日に確認したものです。ニチコン株式会社「Q&A 9.7kWh 単機能蓄電システム」(停電時の使用時間、自立出力、200V対応、残量設定、接続できない家電の分類)、同「Q&A 7.4 kWh /9.9 kWh /14.9kWh /19.9kWh トライブリッド蓄電システム ESS-T5/T6シリーズ」(容量別の目安時間、停電時の出力、残量設定)、同「製品紹介(ESS-H1シリーズ)」(非常時兼用コンセントの条件。ページ上で販売終了品と表示されています)、一般社団法人日本電機工業会「蓄電システム 性能表示ラベルのススメ/どうやって比較?」(初期停電時放電容量とシステム容量利用率(停電時)の内容)。掲載した時間はいずれもメーカーが前提を明示して公表した目安であり、保証値ではありません。編集部が実際に停電を経験して計測したものではなく、記載は公表資料の読み取りです。
確認していない範囲: ニチコン以外のメーカーの停電時の仕様、および動作しない家電の分類が各社で共通かどうかは確認していません。家電ごとの消費電力の公的な一覧は今回取得しておらず、本文の時間はメーカーが置いた前提(合計430W)のままの数値です。待機電力(30W/35Wと公表)が停電中にも同じだけ消費されるかは、Q&Aに通常時と停電時の区別が書かれていないため確認できていません。全負荷配線・特定負荷配線を選んだ場合に実際に残る回路の設計例、JIS C 4413およびJIS C 4414の本文(有償規格)も確認していません。仕様は機種と施工条件で変わります。契約前に各社の最新の仕様書をご確認ください。
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