蓄電池の全負荷型と特定負荷型の違い|性能ラベルにはない分類の正体

蓄電池公開 2026年8月8日
蓄電池の全負荷型と特定負荷型の違い|性能ラベルにはない分類の正体

蓄電池のカタログには「全負荷型」「特定負荷型」という分類が並びます。停電のときに家全体へ給電できるのが全負荷、決めておいた一部の回路だけに給電するのが特定負荷、という説明が一般的です。ところがこの2つの言葉にJIS・法令上の定義は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。しかも業界標準の性能表示ラベルには、この項目がそもそも存在しません。何を比べている分類なのかを、資料を並べて確かめます。

性能表示ラベルの11項目に「全負荷」はない

日本電機工業会(JEMA)は、家庭用蓄電システムを比較するための性能表示ラベルを設けています。項目は11個あり、初期実効容量、初期停電時放電容量、蓄電池容量、システム容量利用率(系統連系時・停電時)、システム充放電効率、想定使用期間、システム生涯蓄電容量、運転音、防じん防水性能、蓄電池劣化時の安全性、と続きます。停電に関する項目は「停電時に満充電から利用可能な電力量」などの容量側の数字で、全負荷か特定負荷かという区分はどこにもありません。

JEMAのQ&Aによれば、ラベルの値はJIS C 4413に基づく評価試験で決まり、ラベルの様式はJIS C 4414で決まっています。つまり規格に基づく製品性能の世界には、この分類は登場しないということです。全負荷・特定負荷は製品単体の性能ではなく、家の分電盤とどうつなぐかという設置構成の話だと読めます(当サイトの整理です)。なおラベルの表示自体も任意で、掲載しないメーカー・機種もあるとされています。

メーカーは「停電時にどこまで給電するか」で説明している

では売り場の説明はどうなっているか。オムロン ソーシアルソリューションズの解説ページは、こう書いています。

全負荷ハイブリッド型は、ハイブリッド型の進化版で、停電時にも家全体の電力を供給できるタイプの蓄電池です。一般的な蓄電池は特定の家電のみ使用可能な「特定負荷型」が多いですが、全負荷型はエアコンやIHクッキングヒーターなどの200V家電にも対応しています。

ポイントは2つあります。停電時の給電範囲が「家全体」か「決めた回路だけ」かという違いと、200V家電が使えるかどうかという違いです。エアコン、IHクッキングヒーター、エコキュートといった200V機器を停電中も動かしたいなら全負荷側の構成が必要になり、冷蔵庫・照明・スマホの充電など100Vで足りるなら特定負荷でも賄える、という整理が各社に共通しています。この分類は単機能型・ハイブリッド型とは別の軸で、どちらの組み合わせもありえます。

正体は分電盤の手前に入る機器

この違いが具体的に何でできているかは、メーカーの構成部材の一覧を見るとはっきりします。パナソニックの創蓄連携システムのプラン例では、停電時に一部の回路へ給電する構成には「電力切替ユニット(特定負荷ブレーカ付)」という機器が入ります。停電時に200Vまで使う構成では、切替ユニットが単相3線用になり、さらに200Vトランスユニットが加わります。同じ蓄電容量5.6kWhでの部材の違いは次のとおりです。

パナソニック 創蓄連携システムのプラン例(蓄電容量5.6kWh・希望小売価格。2026年8月8日確認)
構成 停電時出力100Vタイプ 停電時出力200Vタイプ
電力切替ユニット(特定負荷ブレーカ付) 単相2線用 168,300円 単相3線用 221,100円
200Vトランスユニット(2kVA・据置) — 369,600円
組み合わせ希望小売価格(参考価格) 6,117,738円 6,540,138円

参考価格には工事費やメインの住宅分電盤は含まれておらず、太陽光パネル一式を含んだプラン全体の金額です。値引き前の希望小売価格なので、実売の相場を示すものではありません。それでも、停電時の給電範囲を広げるという選択が、パワコンや蓄電池ユニットではなく分電盤まわりの機器の追加でできていることは読み取れます。プラン名も「全負荷型」ではなく「停電時出力100Vタイプ/200Vタイプ」で、特定負荷という言葉は機器名にだけ登場します。呼び方はメーカーごとに揺れる、ということです。

もうひとつ大事なのは、特定負荷の構成では「停電時にも使用したい機器をあらかじめ配線設計しておく必要があります」とされている点です。停電が起きてから「やっぱり寝室も」とはいきません。逆にオムロンの資料には、ハイブリッド蓄電システムはトランスユニット等の後付けで全負荷型に進化可能という記載もあり、構成を後から広げられる製品もあります。どの回路を残すかは契約前の設計の問題です(当サイトの整理です)。

全負荷でも「全部いつも通り」ではない

全負荷という言葉から、停電中も普段どおりの生活を想像しがちですが、自立運転には出力の上限があります。パナソニックの注記では、自立時の出力は機種により2kVA(AC100V最大20A/AC200V最大10A)や3kVA(AC100V最大30A/AC200V最大15A)までとされ、200Vエアコンは急速暖房時など大電流を消費する動作で自立運転が停止することがある、と明記されています。家全体につながっていても、同時に使える量は2〜3kVA程度という機種が珍しくありません。

使える時間も同じです。全負荷にしたからといって蓄電池の中身が増えるわけではなく、多くの機器をつなぐほど早く減ります。停電時にどれだけ取り出せるかは、カタログの蓄電容量ではなく停電時の実効容量で見る必要があります。読み方は実効容量の記事にまとめています。

停電時に何を動かしたいかから逆算する

ここから先は当サイトの整理で、公的な基準ではありません。

  1. 停電中に動かしたい機器を書き出す。冷蔵庫・照明・通信・スマホ充電までなら100Vで足りる。エアコン・IH・エコキュートを入れたいなら200V対応の全負荷側が候補になる
  2. 特定負荷にするなら、生かす回路を家族で決めておく。あとから変えるには工事がいる前提で考える
  3. 全負荷を選ぶ場合も、自立出力の上限(kVA)と停電時の実効容量を仕様書で確認する。「家全体」は範囲の話で、量の話ではない
  4. 見積書では型の呼び名ではなく、切替ユニットやトランスユニットの品番が入っているか、停電時出力が100Vか200Vかを確認する。見方は蓄電池の見積もりの取り方に書いた
  5. 容量が大きくなる場合は消防への届出の要否も確認する。基準は届出の記事で整理している

全負荷型と特定負荷型は、製品の優劣ではなく停電時の給電範囲の設計です。範囲を広げれば機器と費用が増え、絞れば安く済む。判断の材料は「停電中に何を動かしたいか」に尽きます。価格の実勢は蓄電池の価格の記事、後付けの判断は後付けの記事、機種選び全体は蓄電池の選び方の記事をどうぞ。補助金は全国の一覧で、太陽光ごと検討するなら見積もりガイドの記事と費用ガイドの記事にまとめています。構成の答えは家の分電盤と使い方で変わるので、見積もりの場で「この家で停電時に何が動くか」を書面で出してもらうのが確実です。

この記事の情報について

出典は一般社団法人日本電機工業会「蓄電システム 性能表示ラベルのススメ」、オムロン ソーシアルソリューションズ「家庭用蓄電池の比較」(蓄電池まるわかりナビ)、パナソニック「創蓄連携システム」の停電時のはたらき・システム構成・プラン例の各ページです。確認日はいずれも2026年8月8日(日本電機工業会ページの掲載は2026年8月13日に再確認)です。「全負荷型」「特定負荷型」のJIS・法令上の定義は今回確認した範囲では見つかりませんでした。当サイトが実際に両方の構成を設置して比較したものではなく、記載は公表資料の読み取りです。

確認していない範囲: ニチコン・シャープなど他メーカーの呼称と構成、特定負荷で選べる回路数の上限、停電時の切替時間の横断データ、補助金で全負荷型を要件や加算とする自治体制度の有無は確認していません。掲載した品番・価格は特定メーカーのプラン例であり、機種や施工条件で変わります。最新の仕様は各メーカーの公表資料をご確認ください。