太陽光をすでに載せている家に蓄電池を足すとき、多くの人が考えるのは機器の相性と工事費です。ただ、FIT(固定価格買取制度)の認定を受けている設備なら、そこにもう一つ手続きが挟まります。国は蓄電池の追加を「機器の増設」ではなく、認定した事業計画の変更として扱っています。
国が確認したいのは、買った電気を売り返していないか
資源エネルギー庁が公開している「変更内容ごとの変更手続の整理表」には、変更できる項目が数十行にわたって並んでいます。そのなかに「自家発電設備等の設置の有無」という行があり、備考欄にこう書かれています。
自家発電設備等にはエネファーム、エコウィル、蓄電池、家庭に電気を供給することができる電気自動車等が含まれます。自家発電設備等を併設する場合は、系統の電気が充電されないことなどを確認するため,仕様書の添付が必要です。
蓄電池だけでなく、家に電気を供給できる電気自動車まで同じ枠に入っています。そして仕様書を出させる目的が明記されています。系統から買った電気が蓄電池に入っていないか、という点です。買電を貯めて売電に回すことが起きないように、機器の仕様の段階で見ている、と読めます(当サイトの整理です)。
手続きの種類は一つではない
同じ整理表の冒頭には、変更手続に4種類あることが書かれています。
認定を受けた事業計画を変更する場合、①変更認定申請、②事前変更届出、③事後変更届出、④卒FIT事前変更届出のうち変更する事業計画の項目に応じていずれかを行う必要があります。
「自家発電設備等の設置の有無」は、このうち変更認定申請の欄に印がついています。しかも印は白丸ではなく黒丸です。整理表の凡例には「○は調達価格/基準価格が変わらないもの、●は調達価格/基準価格が変わる可能性があるもの」とあります。つまり売電単価が動きうる変更として分類されています。
| 項目 | 整理表の記載 |
|---|---|
| 手続の種類 | 変更認定申請(事前変更届出の欄にも印あり) |
| 価格への影響 | ●=調達価格が変わる可能性がある |
| 添付書類 | ①配線図(50kW未満太陽光は標準配線図と異なる場合のみ)②構造図(同上)③自家発電設備等の仕様書(50kW未満太陽光は不要) |
| 同時進行 | 「同じ事業計画について、複数の種類の変更手続を同時に行うことはできません」 |
住宅用にあたる50kW未満では、仕様書そのものの添付は不要とされています。ただし手続きが要らないという意味ではありません。項目としては変更認定申請の対象のままです。
価格が動く条件は、蓄電池をどこに繋ぐかで決まる
では実際にいくらの単価になるのか。事業計画策定ガイドラインの2026年4月改訂版と、価格変更の整理表には、同じ注釈が置かれています。読み飛ばしやすい一文ですが、条件が三つ重ねてあります。
太陽電池の合計出力が発電設備の出力よりも大きい場合かつ自家発電設備等が蓄電池の場合であって、当該蓄電池をPCSよりも太陽電池側に新設又は増設する変更に限る
価格が変わるのは、パネルの合計出力がパワコンの出力を上回っていて、なおかつ蓄電池をPCSよりも太陽電池側に入れる場合に限られます。パワコンより家側、つまり交流側に置く一般的な後付けの構成は、この注釈の条件には当たりません。接続の位置が価格の話に直結する、という設計になっています(当サイトの整理です)。
もう一つ、区分が変わる場合の注意書きがある
価格変更の整理表には、上の注釈とは別に、10kW未満の設備に向けた注意書きが載っています。
10kW未満の設備で自家発電設備等を新たに併設しダブル発電に変更する場合など、区分等を変更する場合(上記表の発電出力の変更によるものを除く)は、当該案件に適用されている調達価格/基準価格の属する年度における変更後の区分の調達価格/基準価格に見直される。
ここで見直しの基準になるのは最新年度の価格ではなく、その案件に適用されている価格の年度です。認定を受けた年度の価格表のなかで、区分だけが移る、という書き方になっています。自分の年度の価格表にどんな区分が並んでいたかは、認定通知と資源エネルギー庁の買取価格の資料で照合することになります。売電価格そのものの構造は売電価格の記事にまとめました。
順番を間違えると差し戻される
整理表には、電力会社が関わる項目の手順も書かれています。ここから先は当サイトの整理で、公的な基準ではありません。原文の流れを並べ直すと次のようになります。
- 変更する内容で電力会社に接続・特定契約の申込みをする
- 接続同意書類が電力会社から発行される
- その書類を添付して変更認定申請または届出をする
- 変更認定通知書の写しを電力会社に提出し、特定契約を締結する
原文には「接続同意書類の内容と申請(届出)内容が異なる場合には、申請不備とする」とあります。工事を先に済ませてから書類を揃える進め方だと、この照合が差し戻しの起点になりえます。
補助金の側でも交付決定前の着工が問題になりますが、それは別の系統の話です。補助金申請の流れと混ぜないほうが整理しやすくなります。
費用と容量の話は、手続きとは別に決まる
ここまでは制度側の話です。後付けかセットかを決めるうえでは、機器そのものの条件も並べて見ることになります。カタログの容量がそのまま使える量ではない点は実効容量の記事に、届出が要る容量の線引きは消防への届出にまとめています。選び方の全体像は蓄電池の選び方、見積もりの取り方は蓄電池の見積もりが入口になります。初期費用の考え方は費用のページを参照してください。
この記事の情報について
当サイトは蓄電池を実際に導入した立場ではありません。工事や申請を経験した記述は含んでいません。本文は次の公的資料を読んで整理したものです。
- 資源エネルギー庁「変更内容ごとの変更手続の整理表」(2026年4月1日更新)PDF/確認日 2026年8月8日
- 資源エネルギー庁「調達価格/基準価格が変更される事業計画の変更整理表」(2026年4月1日更新)PDF/確認日 2026年8月8日
- 資源エネルギー庁「事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)」2026年4月改訂PDF/確認日 2026年8月8日
確認していない範囲は次のとおりです。認定年度ごとにどの価格区分が置かれていたか、住宅用で蓄電池を後付けした結果として売電単価が実際に変わった件数、電力会社ごとの接続申込みの所要日数、そして後付け工事そのものの費用相場。いずれも公的な資料を取得できていないため、本文では扱っていません。手続きの要否と価格の扱いは設備ごとに異なるため、自分の認定内容は認定通知と再生可能エネルギー電子申請システムで確認してください。
ソーラー資料室