太陽光の失敗例|いちばん高くついたのは工事が始まる前だった

失敗・トラブル公開 2026年8月8日
太陽光の失敗例|いちばん高くついたのは工事が始まる前だった

「太陽光 失敗」で出てくる話の多くは、設置したあとの話です。発電量が思ったより出ない、電気代がそれほど下がらない、屋根から水が入った。ただ、公的機関が結果を公表している紛争を並べて読むと、金額がいちばん大きく動いていたのは、設置したあとではありませんでした。工事が始まる前にやめようとした場面です。

260万円の契約を、工事の4日前にやめようとした

国民生活センターの紛争解決委員会は、和解の仲介手続が終わったあと、必要と認めるときに結果の概要を公表しています。2026年3月25日に公表された事案のなかに、太陽光発電システムに関する紛争が1件あります。申請人の説明はこう始まります。

令和 7 年 4 月、相手方から太陽光発電を勧誘する電話があり、シミュレーションをすると言われ、太陽光発電に興味があったため、了承した。
後日、相手方の担当者が来訪し、「電気代の国からの補助が 4 月中旬になくなるため、今日契約した方がいい」と言われ、電卓を使ってシミュレーションされた。「どのくらいでペイできると思うか」と聞かれたため「10 年くらいで」と言うと、「そのくらいですね」との答えだったので、10 年くらいでペイできると思った。

太陽光発電システムとヒートポンプ給湯器を合わせて260万円の契約になりました。ガス給湯器は購入から1年未満だった、とも書かれています。

そのあと申請人は知人に相談し、工事予定日の4日前に解約を申し出ます。返ってきた金額が、この事案でいちばん目を引く数字です。

相手方に解約を申し出たところ、工事日が決まった後の解約のため、解約金として契約金額の 50%である 130 万円を請求すると言われた。

まだ工事は始まっていません。パネルは屋根に載っていません。それでも契約書の規定として、代金の半分が請求されました。事業者の側も、契約書どおりの違約金だと説明し、承諾を得たうえで請求書を送ったと述べています。

争点になったのは、電卓を使った会話のほうだった

事業者側の反論も公表されています。断定した表現は使っていない、という主張です。

当社では、「断言」「確定」「確実」を装うような表現は一切行っていない。国からの補助についての発言は、明確に 4 月中旬とは言っておらず、「いつなくなってもおかしくないので、早めの方がよいかも知れない」と伝えており、10 年でペイできるという点については「使われ方や家によって異なるが、一般的に大体そのくらいではないか」と伝えた。

手続のなかで、事業者は訪問の数日前に電話で申請人の電気代やガス代を聞いていたものの、訪問当日は一般的な家庭の数値を示したと述べています。また、太陽光パネルや受電設備の更新が必要になることは説明したが、更新費用の具体的な金額までは説明していないと思う、とも回答しています。

仲介委員の整理は、次の一文にまとまっています。

聴取を踏まえ、仲介委員は、勧誘時の問題点として全体として申請人にとって不利益となる情報を十分に提供していないとの評価をせざるを得ないと整理した。

嘘を言ったかどうかではなく、不利益になる情報を出したかどうかが問われています。見積書の作り方についても、事業者は「部材等」を一式としか書けないと説明しました。この書き方の読み解きは見積書の見方にまとめています。

違約金には、条文で上限がかかる場面がある

仲介委員は、訪問販売にあたる契約であれば損害賠償額に制限があると指摘しました。特定商取引法の第10条第1項は、解除された場合に事業者が請求できる額の上限を、場面ごとに分けています。

四 当該契約の解除が当該商品の引渡し若しくは当該権利の移転又は当該役務の提供の開始前である場合 契約の締結及び履行のために通常要する費用の額

この号は「損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても」超えて請求できない、という柱書のもとに置かれています。契約書に50%と書いてあることと、それを請求できることは別だ、という構造です(当サイトの整理です)。

結果概要には、仲介委員が示した見通しも書かれています。引渡し前の解除であるため、請求できる額は印紙代や事務手数料といった形式的な額にとどまる可能性があり、これに沿った地方裁判所の裁判例もある、という内容です。そのうえで和解が成立しました。

  この事案で出てきた数字
契約額 260万円(太陽光発電システム+ヒートポンプ給湯器)
解約を申し出た時点 工事予定日の4日前(引渡し前)
当初の請求額 契約金額の50%=130万円
仲介委員が指摘した論点 特定商取引法6条1項6号/消費者契約法の不利益事実の不告知/同法10条1項4号による上限
和解の内容 申請人が相手方に20万円を支払う
解除した場面ごとに、請求できる額の上限が分かれている 特定商取引法 第10条第1項(訪問販売における契約の解除等に伴う損害賠償等の額の制限) 一 商品が返還された場合  → 通常の使用料の額 等 二 商品が返還されない場合 → 販売価格に相当する額 三 役務の提供が開始したあとの解除 → 提供された役務の対価に相当する額 四 引渡し・役務の提供が始まる前の解除 → 契約の締結及び履行のために通常要する費用の額 柱書:「損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても」超えて請求できない ※適用の有無は契約の形態によります。個別の判断は消費生活センター等にご確認ください。

もう一つの型は、屋根から始まっている

同じ委員会が2018年に公表した事案は、設置後の話です。築25年のコロニアル屋根の住宅に、約358万円で太陽光発電システムを設置しました。引渡しは平成26年1月、漏水が起きたのは同年5月の大雨です。

屋根裏木材の腐敗、天井、壁の変色、家全体のカビの発生等の修理費用として、1620 万円を支払ってほしい。

設置費用の4倍を超える請求額になりました。事業者側は、漏水は施工ではなく屋根そのものの経年劣化によるものだと反論しています。

また、本件漏水発生当時、申請人宅は既に建築から 15 年以上経過しており、防水シート自体の経年劣化に伴う防水性能の低下によって、漏水事故が発生したと考えられる。

手続のなかで、配線管を固定する針金の施工方法が話題になりました。事業者は、針金の設置方法はメーカーで指定しておらず、現場の判断で行うことになっていると述べています。結局、原因調査は実施されないまま、事業者が300万円を支払う内容で和解しました。原因が確定しないまま解決金で終わっている、という点がこの事案の読みどころです(当サイトの整理です)。

屋根の状態を先に確認しておくことは、この型の入口を減らします。確認の手順は屋根の条件の記事に、工事後の責任の切り分けは施工保証と製品保証の違いにまとめました。

件数の統計は、太陽光を単独で出していない

同じ資料には、委員会全体の申請状況も載っています。令和2年度から令和7年度までの申請は750件で、手続が終了した692件のうち約7割の471件で和解が成立しています。年度別の申請件数は次のとおりです。

年度 令和2 令和3 令和4 令和5 令和6 令和7
申請件数 166 136 142 117 111 78

令和7年度は令和7年12月末現在の数字なので、年度の途中の値です。商品・役務別で最も多いのは教養・娯楽サービスの103件で、関連しそうな区分では修理・補修43件、工事・建築・加工20件、土地・建物・設備17件が並びます。

ただし、この分類に「太陽光発電システム」という項目はありません。太陽光の紛争が何件申請されているかは、今回確認した範囲では公表されていませんでした。事案名に付いた番号から、同種の紛争が繰り返し扱われていることは分かりますが、件数として数えることはできません。

この2件から取り出せること

ここから先は当サイトの整理で、公的な基準ではありません。2件に共通していたのは、契約の場で決まったことが、後から金額として跳ね返っている点でした。

  1. その場でシミュレーションされた数字が、自宅の実際の電気代から作られているかを確認する
  2. 「◯年でペイできる」という会話は、誰が先に言ったかを含めて記録に残す
  3. 設備の更新費用と、その時期を聞き、書面に残してもらう
  4. 解約したときの負担が契約書のどこに書かれているかを、署名の前に読む
  5. 屋根の防水の状態を、設置前に第三者の目で見てもらう
  6. 工事後に不具合が出た場合の連絡先と、原因調査を誰が行うかを決めておく

回収年数を自分で組み立てるための前提は回収年数はどう計算するかに、設置に向かない条件はやめたほうがいいケースの記事に、契約書と見積書の受け取り方は契約前に確認する書類に分けました。訪問を受けて契約した場合の撤回の手順は訪問販売の記事にあります。困ったときは消費者ホットライン188(いやや)で、最寄りの消費生活センターにつながります。

失敗を減らすほうの準備

勧誘を受けてから考えるより、条件を先に決めてから声をかけるほうが、比べられる材料が増えます。業者の見分け方は悪質業者の見分け方、依頼前に決めることは見積もりを取る前に決めておく5つのこと、入口は見積もりのページにまとめています。費用の相場感は費用のページ、蓄電池を含めるかは蓄電池の選び方、使える制度は補助金の一覧から確認できます。

この記事の情報について

当サイトは太陽光を導入した立場でも、紛争の当事者でもありません。本文の事例はすべて、公表されている結果概要を読んで整理したものです。取材や体験に基づく記述は含んでいません。

  • 国民生活センター紛争解決委員会「国民生活センターADRの実施状況と結果概要について(令和7年度第4回)」令和8年3月25日PDF/確認日 2026年8月8日
  • 同「(平成30年度第2回)」平成30年9月13日PDF/確認日 2026年8月8日
  • 特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)e-Gov法令検索/確認日 2026年8月8日

確認していない範囲は次のとおりです。太陽光発電システムに関するADRの申請件数(商品分類として公表されていないため取得できませんでした)、番号の付いた同種紛争のうち今回取り上げなかった事案の内容、店舗で契約した場合や自分から問い合わせた場合の解約金の扱い、消費者契約法の条文、太陽光の施工不良や漏水の発生率。いずれも今回の確認では取得できていないため、本文では扱っていません。紹介した2件は個別の事案であり、同じ条件なら同じ結論になるという意味ではありません。契約や解約について具体的な判断が必要な場合は、消費生活センター(消費者ホットライン188)や弁護士等の専門機関に相談してください。