太陽光をやめたほうがいいケース|国が「設置が困難」と認めた13の条件

費用公開 2026年8月8日
太陽光をやめたほうがいいケース|公的に「向かない」と決まっている条件は1つだけ

「太陽光 やめたほうがいい」で検索すると、向かない条件を並べたページがたくさん出てきます。日当たり、屋根の広さ、築年数、電気の使い方。どれももっともらしいのですが、数字の出どころが書かれていないことが多い。公的機関が「この条件なら外していい」と決めている文書は、探しても多くはありません。見つかったのは2つです。東京都が面積で線を引いたものと、国が13の理由に分けたものです。

先に東京都のほうから見ます。数字で決まっているのはこちらだけだからです。

20㎡と10㎡という数字が、たった1か所にある

東京都は2025年4月から、大手住宅供給事業者に新築住宅への太陽光パネル設置を義務づけています。義務なので、外していい条件を決めておく必要がありました。その基準が「太陽光パネル設置に関するQ&A」に書かれています。

【設置基準算定除外とすることができる住宅例】
・次の①②両方の条件に適合する建築物は算定除外とすることが可能
①水平面(陸屋根)又は南を含む東から西向きまでの屋根(以下「南面等屋根」という。)のうち、最も大きい屋根の水平投影面積が20㎡未満
②方位又は傾斜の異なる南面等屋根が2以上ある場合であって、2番目に大きい屋根の水平投影面積が10㎡未満

数え方に癖があります。対象になるのは南面等屋根、つまり陸屋根か、南を含む東から西向きまでの屋根だけ。北向きの屋根は最初から数に入りません。都はQ&Aの中で3つのケースを例示しています。

南面等屋根の大きさ ケースA ケースB ケースC
1番目 19㎡ 15㎡ 15㎡
2番目 —(北面) 11㎡ 9㎡
判定 除外できる 除外できない 除外できる

ケースBとケースCの差は2㎡です。合計面積はBが26㎡、Cが24㎡で大きくは変わりませんが、2番目の屋根が10㎡以上あるかどうかで判定が割れます。都は「1つの屋根につき最低限必要な太陽光パネルの枚数を確保するため、10㎡以上の設置場所が必要」と書いています。1枚も載らない面は数えない、という考え方です。

その都自身が「適否ではない」と念を押している

この基準をそのまま「20㎡未満の屋根は太陽光に向かない」と読むのは、都の意図と違います。同じページに注記があります。

適否を一律に示すものではありません。それぞれの建物において太陽光発電設備の設置が可能であるかについては、その建物の敷地や隣地等の状況により、検討、判断する必要があることにご留意ください。

これは事業者が制度上どう扱えるかのルールであって、個々の家に載るかどうかの判定ではありません。隣に建物が建てば同じ屋根でも条件が変わります。つまり、公的な「やめたほうがいい」の線は引かれていないということです。制度そのものの中身は 東京都の補助金の記事 にまとめています。

都の試算では、補助金なしの回収は13.8年

同じQ&Aに、都自身の経済性の試算が載っています。ここも数字がはっきりしているので、判断の材料になります。

例えば、令和7年10月時点の試算では、4kWの太陽光パネルを設置した場合、初期費用117万円が13.8年(現行の補助金を活用した場合8.4年)程度で回収可能です。また、30年間の支出と収入を比較すると、最大127万円のメリットを得られる計算となっています。

項目 都の試算値
初期費用(4kW) 117万円
回収年数(補助金なし) 13.8年
回収年数(補助金あり) 8.4年
30年間の設備費用等 150万円程度(パワコン交換を含む)
30年間の売電収入等 237万円程度
20年間のメリット 53万円程度
25年間のメリット 90万円程度
30年間のメリット 87万円程度(補助金ありで127万円程度)

前提は東京都区部・2人以上の世帯です。ここで目を引くのは20年の欄です。53万円を20年で割ると年あたり約2.7万円になります(当サイトの割り算です)。この水準を「得」と見るかどうかが、やめる・やめないの実質的な分かれ目になります。日射条件が都区部より悪い地域なら、この数字はさらに動きます。金銭面も含めたメリットがどんな条件で成立するかは太陽光発電のメリットで項目ごとに整理しています。費用の相場と 売電価格の推移を自分の条件に当てはめて計算し直す必要があります。

公的資料に載っている数字だけを並べると 屋根:算定除外の条件(東京都の義務化制度) ① 南面等屋根で最大の屋根が 20㎡未満 ② かつ 2番目の屋根が 10㎡未満 北向きの屋根は数に入らない 都の注記:適否を一律に示すものではない 事業者の義務の計算ルールであって、家の判定ではない お金:都の試算(4kW・都区部・2人以上世帯) 初期費用 117万円 回収 13.8年(補助金を使うと 8.4年) 20年のメリット 53万円 25年のメリット 90万円 30年のメリット 87万円(補助金ありで127万円) 出力制御:10kW未満は当面の間、対象外 東京電力管内の2026年度の出力制御見通しは 0.03%(資源エネルギー庁の資料を都が引用) 出典:東京都環境局「太陽光パネル設置に関するQ&A」令和8年4月1日版(PDF) 確認日 2026年8月8日。「20年で年あたり約2.7万円」は当サイトが割った数字

出力制御を理由にやめる必要は、いまのところ小さい

「発電しても買ってもらえない日がある」という話を根拠に見送る人がいます。都のQ&Aは、この点も数字で押さえています。

東京電力管内については、2026年度の再エネ出力制御の見通し(出力制御率)は0.03%となっています(10kW未満の太陽光は、当面の間、出力制御の対象外)

出典は資源エネルギー庁の次世代電力系統ワーキンググループの資料(2025年12月)です。住宅用の多くが当たる10kW未満は当面の間、出力制御の実施対象外とされています。ただしこれは東京電力管内の見通しで、他のエリアの数字ではありません。

件数が増えているのは、屋根の話ではない

実際に問題になっているのは、屋根が向いているかどうかより、始め方のほうです。国民生活センターは2025年6月、太陽光発電システムの点検商法についての注意喚起を出しました。PIO-NETに登録された相談件数の推移がこれです。

年度 2019 2020 2021 2022 2023 2024
相談件数 53 62 90 154 304 613

2022年度から3年で4倍になっています。中身は「点検が義務化された」と言われて無料点検を受け、そのまま高額な洗浄やコーティングの契約に進むという型です。センターが挙げている事例では、ドローンで撮影してサーモモニターの色を見せ、約40万円の契約に至っています。

太陽光発電システムは、電気事業法や再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(再エネ特措法)等の関係法令に沿って適切に維持管理することが求められますが、点検義務の対象になるかは、再エネ特措法に基づくFIT制度・FIP制度の利用の有無や出力等により異なります。

点検が要るかどうかは制度と出力で決まるので、一律に義務化されているわけではありません。センターの助言は「その場で契約せずに複数社から見積もりを取り検討しましょう」というものです。訪問してきた業者の言い分をどう確かめるかは 悪質業者の見分け方 に整理しています。

国は「設置が困難な住宅」を13に分けている

もうひとつが国の資料です。国土交通省は住宅トップランナー制度で、大手事業者に太陽光の設置率目標を課しています。注文戸建で87.5%、建売で37.5%(2027年度)です。

この設置率を計算するとき、設置が困難な住宅は母数から外せます。外せる理由が13並んでいます。

理由 資料の定義(要約)
雪 垂直積雪量1m以上の地域(融雪機能付きモジュールで対応した場合を除く)
高度制限 敷地面積85㎡未満で、高度地区の高さ制限がある地域(平屋を除く)
北側斜線かつ狭小地 敷地面積85㎡未満で、北側斜線制限がある地域
日影規制 条例で指定する区域内で、北側に高さ制限を受ける住宅
日照条件 周囲に高層の建築物や傾斜地があり、日照条件が著しく低下する可能性
関係法令等の規制 景観地区など、形態・意匠のルールで設置が困難
光害 隣地と高低差があり、隣接する住戸に光害を与える可能性(防眩仕様で防止した場合を除く)
台風災害・風速制限 飛来物による破損の可能性、または風速制限を超える可能性
塩害 塩害を受ける可能性がある
降灰 降灰の影響を受ける可能性がある
標高制限 メーカーが定める設置可能な標高の制限を受ける地域
屋根制約 屋根の形状が不整形、または設置可能面積が小さい
その他 自由記述

⑧〜⑪の4つ(台風・塩害・降灰・標高)には共通の説明が付いています。メーカーの保証対象外になる地域という整理です。

都の基準とは性格が違う

東京都 国(住宅トップランナー)
決め方 面積の数字(20㎡・10㎡) 13の理由。数字があるのは2つだけ
数字がある項目 すべて 積雪1m以上/敷地85㎡未満
誰のためのルールか 事業者の義務履行 事業者の報告区分

どちらも、個人の家に載せられるかどうかを判定する基準ではありません。事業者が「この家は数に入れなくていい」と整理するための区分です。

それでもここから先は当サイトの整理として言えることがあります。塩害・降灰・積雪・強風・不整形な屋根は、国の資料の上でも「設置が困難」に数えられているということです。営業の場で「問題ありません」とだけ言われたら、この13項目のどれに当たるかを聞いてください。

設置義務そのものの全体像は太陽光の設置義務がある自治体は5つにまとめています。

やめたほうがいいと言えるのは、どんなときか

ここから先は当サイトの整理で、公的な基準ではありません。上の資料から言えるのは、次のような場合です。

  1. 南面等屋根が20㎡を切る家。都の除外条件と同じ形なので、載る量そのものが小さくなります
  2. 2番目の屋根が10㎡未満で、1面に集約できない家。都は1面10㎡を最低限の目安に置いています
  3. 13.8年より前に建て替えや売却の予定がある場合。都の試算は回収までにそれだけかかる前提です
  4. 20年で53万円という水準を「割に合わない」と判断する場合。金額の大小ではなく、その額に見合う手間をかけられるかどうかです
  5. 訪問してきた業者の説明が出発点になっている場合。613件の相談はそこから始まっています
  6. 国の13項目のどれかに当たる家。塩害・降灰・積雪1m以上・強風・不整形な屋根などは、国の資料でも「設置が困難」に数えられています

逆に、屋根の条件が足りていて、10年以上住み続ける見込みがあるなら、やめる根拠として使える公的な数字は見当たりません。見積もりを取る前に決めておくことを先に片づけてから判断しても遅くありません。

まとめ

  • 公的機関が「外していい」と決めている文書は2つ。東京都の算定除外と、国の住宅トップランナー制度です
  • 数字で決めているのは東京都だけ。国の13項目で数字があるのは積雪1m以上と敷地85㎡未満の2つ
  • 国は塩害・降灰・台風・標高を「メーカーの保証対象外になる地域」として並べています
  • その基準は南面等屋根20㎡未満かつ2番目が10㎡未満。北面は数えません
  • 都は同じページで「適否を一律に示すものではない」と注記しています
  • 都の試算では4kWの初期費用117万円、補助金なしの回収は13.8年
  • 20年のメリットは53万円、25年で90万円、30年で87万円という並びです
  • 10kW未満は当面の間出力制御の対象外。東京電力管内の2026年度見通しは0.03%
  • 点検商法の相談は2024年度に613件で、3年で4倍に増えています

やめるかどうかは、屋根の面積と住み続ける年数という2つの数字でほぼ決まります。どちらも自分で測れる数字です。数えたうえで進めるなら、見積もりを取る前の準備と 見積もりの取り方を確認してください。設備の中身は 蓄電池の選び方、費用の全体像は 太陽光発電の費用、使える制度は 太陽光発電の補助金一覧 にまとめています。価格が下がり続けているわけではないことは 費用の推移 で確認できます。

この記事の情報について

以下を2026年8月8日に公式サイトで直接確認したものです。引用は原文のままです。

確認していない範囲:

  • 都の試算に使われた売電単価・自家消費率・年間発電量の前提。PDFには結果しか載っていません
  • 20㎡・10㎡という数字が、どういう計算から出てきたか
  • 点検商法以外の相談(訪問販売による新規契約など)の件数の内訳
  • 2025年度以降の相談件数。公表されているのは2025年3月31日登録分までです
  • 積雪・塩害・強風について、2026年8月13日に国土交通省の資料で該当する記載を確認しました。ただし数値が示されているのは積雪(垂直積雪量1m以上)だけで、塩害・強風・降灰・標高は「可能性がある」「メーカーの保証対象外」という書き方で、数値の基準はありません
  • 13項目のうち、個々の住宅がどれに当たるかを判定する基準。これは事業者が報告するときの区分です
  • 設置率の目標(注文戸建87.5%・建売37.5%)について、区分ごとに差がある理由
  • 東京電力管内以外のエリアの出力制御の見通し

「20年で年あたり約2.7万円」は、都が示した53万円を当サイトが20で割ったものです。都が示した数値ではありません。「やめたほうがいいと言えるのは、どんなときか」の5項目も当サイトの整理であり、公的機関が示した判断基準ではありません。

都の算定除外は住宅供給事業者の義務履行に関するルールで、個人の家に太陽光を載せられるかどうかを決めるものではありません。都自身がそう注記しています。

この記事は公開情報を整理したものです。当サイトが実際に太陽光発電を設置して比較した結果ではありません。