「太陽光発電はこれから増えるのか、それとももう終わりなのか」。公的資料と業界団体の資料を確認した結論として、縮小を見込む見通しは見つかりませんでした。国の計画は2040年度に電源構成の23〜29%(2023年度は9.8%)、業界団体の見通しは2050年に現在の6倍。ただしこの2つの数字は、作った主体も性格も違います。
この記事では「誰の見通しか」で数字を分けて並べ、最後に、その見通しが自宅の設置判断にどうつながるか・つながらないかまで整理します。
世界では、1年で導入量が8割増えた
まず世界の実績です。業界団体の太陽光発電協会(JPEA)が国際資料をもとに整理した数字では、2023年の世界の新規導入量は約407〜446GWで、前年比79〜96%増と急拡大しています(GW=100万kW。パネルの直流出力ベース)。
一方、日本の2023年の新規導入量は6.2GWで、世界の1.5%程度に低下しています。世界全体では拡大が続いているのに対し、日本の年間導入量は減少傾向という構図です。「太陽光はもう終わり」という印象と、世界の実績は正反対の方向を向いています。
国の見通し:2040年度に電源の23〜29%
次に国の数字です。2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画は、2040年度のエネルギー需給の見通しを次のように示しています。
| 項目 | 2023年度(速報値) | 2040年度(見通し) |
|---|---|---|
| 太陽光 | 9.8% | 23〜29%程度 |
| 再生可能エネルギー全体 | 22.9% | 4〜5割程度 |
| 発電電力量 | 9,854億kWh | 1.1〜1.2兆kWh程度 |
(経済産業省 官民協議会資料〈2025年5月〉に収載された第7次エネルギー基本計画の見通しより。当サイトで抜粋)
注意したいのは、発電電力量そのものも増える前提だということです。比率と電力量を掛け合わせると、太陽光の発電量は2023年度の約966億kWhから2040年度は約2,530億〜3,480億kWhへ、単純計算で約2.6〜3.6倍になります(当サイトの計算)。見通しに幅があるのは、資料自身が「複数のシナリオを用いた一定の幅として提示」しているためです。
この計画には、新しい技術の導入目標も入っています。軽くて曲がる次世代型のペロブスカイト太陽電池は2040年までに20GWの導入目標です。現在地はペロブスカイト太陽電池はいつ家庭で使える?で整理しています。
業界団体の見通し:2050年に今の6倍
もっと長い時間軸の数字を出しているのが、太陽光発電協会(JPEA)の「PV OUTLOOK 2050」(2024年7月公開・2024年版)です。累計導入量の見通しは2030年度125GW → 2035年度173GW → 2050年400GW(交流ベース。2022年度末の実績は71GW)。資料自身の言葉では、こうです。
2050年の導入見通し400GWACは2022年度末の6倍近くであり、実現の為には多くの課題を克服する必要がある
(JPEA「PV OUTLOOK 2050」2024年版)
根拠として示されているのが設置余地の推計です。国内の導入ポテンシャルは2,380GW(直流ベース)と推計され、2022年度末の導入実績87GWはその3.6%にすぎないとしています。資料の見出しには「日本には導入余地が沢山残されている」とあります。電源構成に占める太陽光の比率は、この見通しでは2030年17%・2035年22%・2050年36%です。
この数字を読むときの注意です(当サイトの整理)。JPEAは太陽光発電の業界団体で、この資料は業界が自ら掲げた目標の性格を含むビジョンです。閣議決定された国の計画と同列には扱えません。ただし、推計の前提条件を公開したうえでの分析であり、「業界は2050年もこの規模の市場が続くと見て投資している」ことを示す資料としては読めます。
住宅の屋根は、どの見通しでも増える側にある
家を持つ人に関係するのは住宅の内訳です。JPEAの見通しでは、戸建住宅の累計導入量は2025年の18.4GWから2050年に90.9GWへ増えます。2050年の設置形態別では住宅用が約114GWで全設置形態の中で最大です(次いで農業関連の約107GW)。
新築については「2050年新築住宅へのPV搭載率100%」が業界の目標として掲げられています。現状はどうかというと、JPEA資料が引用するSIIの2022年調査で、新築戸建てのZEH化率は注文住宅で33.5%、建売住宅で4.6%。同じ注文住宅でもハウスメーカー68.2%に対して一般工務店16.4%と、建てる会社によって大きな差があります。
既存の家については、1981年の新耐震基準以降の戸建て住宅が約1,500万戸あることが、普及の母数として挙げられています。方向性としてはっきりしているのは、売電で稼ぐモデルから自家消費へという転換です。売る単価と買う単価の差がどうなっているかは卒FIT後はどうするかと電気代はいくら安くなるかで確認できます。
「増える見通し」は「安くなる約束」ではない
ここまでの数字から「これから普及するならもっと安くなるはずだから待とう」と考えたくなりますが、実績はその直感と違います。新築住宅用の設置費用の平均は2022年が底で、パネルは安くなった一方、工事費は上がっています。経緯は太陽光の費用の推移で数字ごと確認できます。また、売電価格は制度設計として下がり続けます。つまり「増える見通し」は、待てば得になることを意味しません。
「増えすぎると電気が余って無駄になるのでは」という疑問には、JPEAが試算を出しています。2050年に400GWが入った場合の出力抑制率はベースケースで8.7%、蓄電池や水素製造などの対策を織り込むと1.0%まで下がるという見通しです(シナリオによって11〜12%台の試算もあります)。
結局のところ、全国の見通しがどうであれ、設置の損得は自宅の条件で決まります。屋根の向きと使用量から損得の前提を確認したい場合は元が取れるのかを、費用の全体像は費用ガイドをどうぞ。
まとめ
- 世界の新規導入は2023年に前年比79〜96%増。日本のシェアは1.5%程度に低下
- 国の見通しは2040年度に電源の23〜29%(2023年度9.8%)。発電量では約2.6〜3.6倍(当サイトの計算)
- 業界団体の見通しは2050年に400GW(今の6倍近く)。ただし目標の性格を含む数字
- 住宅用は2050年に設置形態別で最大の約114GWという見通し。方向は自家消費型へ
- 「増える見通し」と「待てば安くなる」は別の話。設置費用の平均は2022年が底
「これからも使われ続ける設備か」という不安に対しては、国も業界も増える前提で計画を組んでいる、というのが資料から言える答えです。自分の家でどうかを確かめる手順は見積もりガイドと太陽光発電の基本ガイドにまとめています。
この記事の情報について
この記事は、次の資料をもとに作成しました。確認日は2026年8月13日です。
- 太陽光発電協会(JPEA)「太陽光発電産業の新ビジョン “PV OUTLOOK 2050”(2024年版ver.1)」(2024年7月1日)PDF。世界の導入実績(IEA PVPS資料に基づく整理)、2050年見通し、住宅の内訳、ZEH化率(SII 2022年調査の引用)、出力抑制の試算はこの資料によります
- 次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会 事務局「次世代型太陽電池に関わる動向について」(2025年5月)PDF。第7次エネルギー基本計画の2040年度見通しはこの資料の収載内容で確認しています
確認していない範囲
- 第7次エネルギー基本計画の本文そのもの(官民協議会資料の概要・見通し表で確認)
- JPEAの導入見通しの推計過程(IRR分析・普及曲線など)の妥当性。前提条件は資料で公開されていますが、当サイトで検証はしていません
- 2024年以降の世界の導入実績(資料の実績値は2023年まで)
- 出力抑制や経済波及効果の試算はJPEAのシナリオ計算で、第三者による検証は確認していません
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