エコキュートは、電気を熱に変えてタンクにためる装置です。蓄電池は電気のままためる。どちらも「ためる」設備なので、太陽光の余りをどちらに回すかという選択が生まれます。ここを整理しないまま蓄電池だけを検討すると、すでに家にある設備の役割を数え落とすことになります。
給湯は家庭のエネルギー消費の4分の1程度
まず、給湯がどれくらいの比重なのかを公的な統計で確認します。環境省の家庭部門の調査はこう書いています。
給湯によるエネルギー消費量は家庭でのエネルギー消費量全体の4分の1程度を占めており、エネルギー消費量の多い用途として挙げられます。近年は給湯器・給湯システムの種類が増え、電気ヒートポンプ式給湯器(エコキュート)や家庭用燃料電池(エネファーム)のような高効率な機種の普及も進んできています。
用途別のCO2排出構成比では、次のように示されています。
| 暖房 | 冷房 | 給湯 | 台所用コンロ | 照明・家電製品等 |
|---|---|---|---|---|
| 19.5 | 5.7 | 24.0 | 4.5 | 46.3 |
給湯が24.0%。単独の用途としては照明・家電に次ぐ大きさです。ここを昼の太陽光でまかなえるなら、蓄電池に回すべき量も変わってきます(編集部の整理です)。なお、これはCO2の構成比であって、電気代に占める割合とは別の指標です。
エコキュートは戸建の3割弱、新しい家ほど多い
普及状況も同じ調査に出ています。
給湯器・給湯システムの機種は住宅の建て方の違いによる差が大きくなっています。集合住宅に住む世帯では83%がガス給湯器・風呂がまを使用している一方、戸建住宅に住む世帯では5割程度となっています。電気ヒートポンプ式給湯器については、戸建住宅世帯での使用率は28%となっている一方、集合住宅世帯での使用率は3%程度となっています。
建築時期別では、新しい家ほど比率が上がります。
住宅が建てられた時期別に見てみると、新しい住宅に住む世帯ほど電気ヒートポンプ式給湯器の使用率が高く、ガス機器や灯油機器の使用率が低い傾向が見られます。
2021年以降に建てられた住宅では39.5%。太陽光と蓄電池を検討する層と重なりやすい層です。集合住宅での蓄電池の扱いはマンションの記事にまとめています。
昼の余りには3つの行き先がある
太陽光の余剰電力をどうするかは、次の3つに分かれます。
| 行き先 | ためる形 | 使えるもの | 制約 |
|---|---|---|---|
| お湯にする | 熱 | 給湯・風呂 | タンクが満たされたら止まる |
| 蓄電池にためる | 電気 | 家中の電気 | 容量と出力の上限がある |
| 売る | ためない | – | 単価は契約と時期で決まる |
順番の話をすると、すでにエコキュートがある家では、お湯側の受け皿は最初から存在します。ダイキンの昼間沸き上げ機種の説明はこうです。
太陽光発電でつくった電力を自家消費して、主に昼間に沸き上げを行うダイキンおひさまエコキュート。環境に配慮しながら、効率的にお湯を沸かして電気代節約にも貢献します。
売電単価の水準は卒FITの記事に整理しました。売る単価が下がるほど、ためる側の価値が相対的に上がる関係です。
昼間沸き上げは、機能の名前がメーカーごとに違う
同じ「昼に沸かす」でも呼び方が揃っていません。日立は次の名称で説明しています。
ご自宅の太陽光発電の余剰電力を利用して、昼間にお湯を沸かせる HEMS*1を導入していないご家庭でもリモコン操作(手動)により、お好みの設定で昼間にお湯を沸かせます。
設定できる時間には上限があります。
※昼間の沸き上げの時間は最大4時間まで設定できますが、当日使用湯量が沸き上がった時点で停止します。
ダイキン側は時間帯で設定する方式です。
おひさまエコキュートは太陽光発電を行わない天候の悪い日でも自家消費時間帯に沸き上げを行います。(工場出荷時の自家消費時間帯は9時〜16時です)
自家消費時間帯は、開始時刻5時~10時、終了時刻14時~17時の範囲でリモコン設定から変更が可能です。
「天候の悪い日でも沸き上げを行う」と書かれている点に注意が必要です。晴れる前提の設定ではありません。
外れたときは、高い時間帯の電気で沸かすことになる
ここがメーカー自身の注記に明記されている部分です。日立の注記から。
※天気予報が外れた場合や、太陽光発電電力量がエコキュートの消費電力より少ない場合は余剰電力が不足し、電力会社からの電気で沸き上げる場合があります。その場合、昼間の電気料金での沸き上げとなるため、電気料金が増える場合があります。※充分な湯量がある場合は、昼間に沸き増ししない場合があります。
ダイキン側にも同じ趣旨の注意事項があります。
お客様でお使いの太陽光発電システムが別途必要です。
電力契約につきましては、ご契約される電力会社へお問い合わせください。
太陽光発電の余剰電力で足りない場合は、通常の電力が使用されます。
昼間沸き上げは、外れた日には昼の単価で沸かすことになる設定だということです。時間帯別の単価差が大きい契約ほど、この差は効いてきます。プランの型の違いは電気料金プランの記事に整理しました。
もう1つ、熱でためることの物理的な制約もダイキンの説明に書かれています。
沸き上げ完了からお湯を使用するまでの間に、お湯の熱は少しずつ逃げてしまいます。
電気でためる蓄電池には、この「時間が経つと逃げる」性質の説明はありません。ためた電気をいつ使うかの自由度は、蓄電池のほうが高い構造です(編集部の整理です)。
すでにエコキュートがある家に蓄電池を足せるか
機器の側では、併設そのものは問題にされていません。蓄電池メーカーのQ&Aから2つ。
Q 既に「エコキュート」が設置されている場合、設置は可能ですか。
A 可能です。
Q 「エコキュート」との接続は可能ですか。
A 可能です。
ただし、両方に昼の余剰を回そうとすると取り合いになります。同じ時間帯に沸き上げと充電が重なれば、余剰は先に片方へ流れます。優先順位を機器側でどう設定できるかは機種によります。設定の考え方は運転モードの記事にまとめました。
なお、太陽光がない家では前提が変わります。メーカー自身も併設を勧めています。
Q 太陽光を設置していない家にも設置可能ですか。
A 設置は可能ですが、節電などの効果を引き出すためには太陽光発電も設置されることをおすすめいたします。
太陽光なしで蓄電池だけを入れる場合は蓄電池だけを設置する記事を参照してください。
どちらを先に検討するかの整理
ここから先は編集部の整理で、公的な基準ではありません。
- 今の給湯機器を確認する。エコキュートなら昼間沸き上げの機能があるかを取扱説明書で見ます
- その機能があるなら、まず設定を変えてみる。追加の費用なしで余剰の行き先を1つ増やせます
- 外れた日の扱いを確認する。天候が外れたときに昼の単価で沸かす仕様かどうかは注記に書かれています
- それでも余る量が残るかを見る。残るなら、その量が蓄電池の検討対象です
- 停電時にどこまで必要かを別途決める。給湯は熱として残っていても、沸き上げには電気が要ります
停電時に何が動くかは停電で何が動くかの記事、オール電化の家の出力の考え方はオール電化の記事に整理しています。見積書の読み方は蓄電池の見積もりの見方にまとめました。
まとめ
- 給湯は家庭のエネルギー消費全体の4分の1程度。用途別CO2排出構成比では24.0%
- 電気ヒートポンプ式給湯器の使用率は戸建で28.3%、2021年以降に建てられた住宅では39.5%
- 昼の余剰の行き先は、お湯・蓄電池・売電の3つ
- 昼間沸き上げの機能名はメーカーごとに違う。設定方法も時間指定と時間帯指定で分かれる
- 天候が外れた日は昼の電気料金で沸かすことになるとメーカーの注記に書かれている
- お湯は時間が経つと熱が逃げる。ためた電気をいつ使うかの自由度は蓄電池のほうが高い
なお、エコキュートの買い替えには国の補助が使えます(エコキュートの補助金の記事)。要件に「昼間に沸き上げをシフトする機能」が入っている点は、この記事の内容と直接つながります。
すでにある設備の役割を数えてから、足りない分を蓄電池で埋める。この順番だと必要な容量も小さく見積もれます。蓄電池のまとめから関連する記事をたどってみてください。
この記事の情報について
出典は、環境省「家庭部門のCO2排出実態統計調査」のウェブサイト(令和5年度の用途別CO2排出構成比、給湯機器の普及状況。同サイトの出典表記は「令和5年度家庭部門のCO2排出実態統計調査 資料編(確報値)」およびe-Stat)、日立グローバルライフソリューションズ「太陽光発電利用沸き上げ」の製品ページ(同ページの注記により、水道直圧給湯フルオート標準タンク(高効率)BHP-FV46SD、BHP-FV37SDの説明)、ダイキン工業「おひさまエコキュートの特長」、ニチコン株式会社「Q&A ESS-T5/T6シリーズ トライブリッド蓄電システム」です。いずれも公式ページを直接取得して確認しました。確認日は2026年9月6日です。掲載した機種の仕様は特定の製品のもので、他機種に当てはまるものではありません。編集部がエコキュートと蓄電池を併用して検証した立場ではなく、記載は公表資料の読み取りです。
確認していない範囲: パナソニック、三菱電機、コロナなど他メーカーの昼間沸き上げ機能の名称と仕様は確認していません。エコキュートと蓄電池のどちらを先に導入すべきかを示した公的な指針は見つかりませんでした。昼間沸き上げに切り替えた場合の削減額は、メーカーの試算が細かい前提条件のうえに置かれており他の家に当てはめられないため扱っていません。機種ごとの消費電力・タンク容量と余剰電力量の対応関係、停電時にエコキュートのお湯が使えるかどうかもメーカー・機種で異なるため確認していません。用途別CO2排出構成比の24.0%はCO2ベースの数値であり、電気代に占める給湯の割合とは別の指標です。金額ベースの内訳は確認していません。
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