蓄電池の勧誘について、国が注意喚起を出しています。国民生活センターの2021年の資料です。そこには相談件数だけでなく、実際の契約額と営業の文言がそのまま記録されています。約200万円、約250万円、約330万円。この記事は、その資料に書かれていることだけで構成します。
相談は5年で4倍になった
資料の冒頭にこうあります。
全国の消費生活センター等には家庭等で利用する据置型蓄電池(以下、家庭用蓄電池)に関する相談が多く寄せられています。相談件数は近年増加傾向にあり、2019年度には1,000件を超え、2020年度は1,314件です。
推移も示されています。
2016年度の相談件数は325件、2017年度の相談件数は553件、2018年度の相談件数は926件、2019年度の相談件数は1,302件、2020年度の相談件数は1,314件です。
| 年度 | 件数 |
|---|---|
| 2016年度 | 325件 |
| 2017年度 | 553件 |
| 2018年度 | 926件 |
| 2019年度 | 1,302件 |
| 2020年度 | 1,314件 |
増えた背景として、資料は固定価格買取制度の買取期間が2019年以降に順次満了していくことを挙げています。卒FIT後の選択肢については卒FITの記事に整理しました。
相談の大半は訪問販売
参考資料に内訳があります(2016年4月1日以降受付、2021年4月30日までの登録分)。
・販売購入形態別にみると、訪問販売(3,456件)が最も多く、電話勧誘販売(503件)、店舗購入(142件)と続きます(図3)。
母数は4,158件です。訪問販売が3,456件で、8割を超えています。ただしこれは相談の内訳であって、市場全体の販売経路の比率ではありません(このサイトの注記です)。
契約した人の属性も出ています。
・契約当事者の性別は、男性が約70%(3,110件)、女性が約30%(1,245件)を占めています。年代別にみると、30歳代以上において特定の年代に大きな偏りはなく、各年代から相談が寄せられています(図2)。
・契約当事者の地域別にみると、東海(778件)が最も多く、南関東(715件)、九州北部(621件)、近畿(556件)と続きます
高齢者に偏っているわけではなく、30歳代以上から幅広く寄せられている、というのが資料の記述です。
記録された契約額
相談事例には金額が書かれています。無料点検から始まった事例です。
事業者が「市から委託された」と太陽光パネルの無料点検で訪問した。後日点検してもらったところ、「売電するための装置の一部が壊れている」「太陽光パネルが破損している可能性が高い」等と説明された。最初に訪問した担当者から、「売電するための装置の修理をするよりも家庭用蓄電池を購入した方がいい」と勧誘され、「国の補助金が出るので安くなる」と言われたこともあり、約200万円の家庭用蓄電池の契約をした。ところが後日、訪問した工事担当者からは「売電するための装置は壊れていない。部品もモーターも正常だ」と言われた。
点検商法の型については悪質業者の見分け方の記事と点検相談のレポートにまとめています。
4時間の勧誘という事例もあります。
事業者を家にあげると、「今なら工事費、設置費無料で、20年から30年はもつ。元は取れる」等と説明され、執拗な勧誘が4時間続き、契約しないと担当者に帰ってもらえないと思い契約してしまった。クレジット契約で約330万円と高額な契約であることが後になって心配になり、翌日クーリング・オフを申し出たが、事業者から「通知の送付は不要だ」等と言われ、本当に解約できたのか不安だ。
金額の説明が食い違った事例もあります。
10年前に太陽光パネルを設置した実家に当時の事業者が訪問し、母が家庭用蓄電池の勧誘を受けた。40年もち、30年目で元が取れる、災害時にも役立つとの説明を聞いて、契約したようだ。金額について母から150万円と聞いているが、ローンの契約書をみると合計金額が約250万円とあり、差額について明細が分からない、また、契約書では10年毎にメンテナンス費用が発生するとなっているが、母は事業者から説明されていないようだ。
「40年もち、30年目で元が取れる」。この年数に公的な裏づけはありません。業界団体の性能表示ラベルにサイクル数の欄すらないことは寿命の記事に書きました。
補助金をめぐるトラブルもある
自宅を訪問した事業者から「太陽光パネルを設置している家を回っている。発電した電気を家庭用蓄電池に充電すれば無駄が少なく、災害にも強くなる。自治体から補助金も出る」等と勧誘され、家庭用蓄電池を契約した。自治体への補助金申請は事業者が行うと言っていたので信用していたが、いつまで待っても連絡がなく自治体に問い合わせたところ「申請されていない。今からでは間に合わない」と回答された。
資料はこの型をこうまとめています。
事業者と家庭用蓄電池の契約をしたものの、「設置工事が着工されない」「設置場所や設置方法が思っていたものと違う」等、設置工事に関するトラブルのほか、国や自治体の補助金について事業者が必要な手続きをせず、「補助金を受け取れなかった」といったトラブル(事例4)もみられます。
補助制度の現状は補助金の全国一覧で確認できます。
国が「そうとは限らない」と書いている
この資料でいちばん重いのは、消費者へのアドバイスの見出しです。
しかし、どの方法がより経済的なメリットがあるかについては、電気料金や家庭用蓄電池等の価格及び小売電気事業者等の買取メニューによって異なります。また家庭用蓄電池は、「災害時に活用できる」といったメリットもあり、経済価値に直接換算することのみで判断するのは難しい面もあります。「固定価格での買取期間満了後は売電するより家庭用蓄電池を導入して自家消費する方がよい」等と事業者に説明されてもうのみにせず、自身でも情報収集し、総合的に判断するようにしましょう。
「卒FIT後は売電より蓄電池のほうがよい」という説明を、うのみにするなと国が書いています。断定的な説明についても指摘があります。
家庭用蓄電池の導入により「電気料金が安くなる」(事例5)「災害時も安心」(事例2、4)等といった説明に加え、「(電気料金を抑えることで)○年で元がとれる」(事例2、3)「売電するよりも家庭用蓄電池を導入した方がよい」(事例3)等と説明をされているケースがみられます。実際の電気使用状況によっては必ずしも事業者の説明通りになるとは限らないにもかかわらず、事業者からの断定的な説明を受けて家庭用蓄電池の契約に至っているケースが目立ちます。
法律で決まっていること
訪問販売には手続きの決まりがあります。
特定商取引に関する法律(以下、特商法)では、事業者が訪問販売を行うときには、勧誘に先立ち、消費者に対して、事業者の氏名(名称)、契約の締結について勧誘する目的である旨、販売しようとする商品(権利、役務)の種類を告げなければならないと定められています(特商法第3条)。
解約についても定めがあります。
特商法の訪問販売に該当する場合、クーリング・オフは不備のない正しい記載がなされている契約申込書面又は契約締結書面を受け取った日から8日以内であれば無条件で行使可能であり、既に契約代金の一部を支払ってしまっている場合であっても、その返還を請求することができる。
8日の起算日は書面を受け取った日です。契約した日ではありません。手続きの詳細は訪問販売で契約してしまったらの記事にまとめました。
訪問を受けたときの確認事項
ここから先はこのサイトの整理で、公的な基準ではありません。上の資料から読み取れる確認点を並べます。
- 会社名と、勧誘が目的である旨を名乗ったか。法律上の義務です
- 「市から委託された」「電力会社の関連会社」と言われたら、その団体に直接確認する
- 「今日限り」「あと2件」と急かされたら、その場では契約しない
- 「◯年で元が取れる」の前提を書面で出してもらう。年数だけの説明は根拠になりません
- 補助金の申請を業者が代行すると言われたら、申請の期限と進捗の確認方法を決めておく
- 契約書の総額と、聞いた金額が一致しているか。ローンの契約書は別に確認する
提示された金額が妥当かどうかは見積もりの妥当性の記事で判定できます。デメリットの一覧はデメリットの記事にあります。トラブルになったときは消費者ホットライン「188」に相談できると資料に案内があります。
まとめ
- 家庭用蓄電池の相談件数は2016年度325件から2020年度1,314件へ増えた
- 販売購入形態は訪問販売3,456件が最多(母数4,158件)。電話勧誘販売503件、店舗購入142件
- 相談者は男性が約70%。年代は30歳代以上に大きな偏りがない
- 記録された契約額は約200万円・約250万円・約330万円
- 「40年もち、30年目で元が取れる」「20年から30年はもつ」といった説明が記録されている
- 国は「売電より自家消費のほうがよい」という説明をうのみにするなと書いている
- 訪問販売では氏名・目的・商品の種類を告げる義務があり、クーリング・オフは書面受領から8日
この記事の内容はすべて、国民生活センターが公表している資料に書かれていることです。心配なことがあれば、契約の前に消費生活センターに相談できます。
この記事の情報について
出典は、独立行政法人国民生活センター「家庭用蓄電池の勧誘トラブルにご注意!-事業者の突然の訪問を受けてもその場で契約はせずによく検討しましょう-」(報道発表資料 令和3年6月3日、2021年6月8日更新)です。PDF本文を直接取得して確認しました。確認日は2026年9月6日です。相談件数は同資料に記載された2021年4月30日までのPIO-NET登録分であり、消費生活センター等からの経由相談は含まれていません。相談事例の引用は同資料に掲載された原文です。当サイトは施工・販売を行っておらず、記載は公表資料の読み取りです。個別の契約についての判断は、最寄りの消費生活センターにご相談ください。
確認していない範囲: 2021年度以降の相談件数は、この資料の後の公表を確認していません。販売購入形態の内訳は相談として寄せられたものの比率であり、市場全体の販売経路の比率ではありません。事例に登場する事業者名、契約がその後どうなったか、クーリング・オフが実際に成立したかは資料に記載がなく確認できません。相談件数の増加が販売台数の増加によるものか、トラブルの発生率の変化によるものかも、この資料からは判断できません。
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