太陽光の火災で燃えているのはパネルではない|72件中59件はパワコンと接続箱

失敗・トラブル公開 2026年8月8日
太陽光の火災で燃えているのはパネルではない|72件中59件はパワコンと接続箱

太陽光発電の火災と聞くと、屋根の上でパネルが燃えている場面を思い浮かべるかもしれません。ところが国の事故調査で発生箇所を数えると、違う絵が出てきます。調査対象となった72件のうち59件は、屋根の上のパネルではなく、壁際に付いているパワーコンディショナと接続箱から発生していました。

数えたのは消費者事故調。母数は127件の事故情報

この数字の出どころは、消費者庁に置かれた消費者安全調査委員会(いわゆる消費者事故調)が平成31年1月28日に公表した調査報告書です。事故情報データバンクに平成20年3月から平成29年11月までに登録された127件の火災・発火・発煙・過熱の情報から、原因調査中や原因不明のものを除いた72件を調べています。報告書の概要にはこう書かれています。

調査対象のうち、太陽電池モジュール(以下「モジュール」という。)又はケーブルから発生した火災事故等が13件であった。また、パワーコンディショナ又は接続箱から発生した火災事故等が59件であった。

つまり件数の上では、火元の8割はパネル以外の周辺機器です。それでも事故調が重点的に調べたのは、少数派の13件のほうでした。モジュールとケーブルは屋根材のすぐ近くにあり、住宅の火災、ひいては生命身体の被害につながりうるからです。

調査対象72件の推定発生箇所 パワーコンディショナ・接続箱 59件 モジュール・ケーブル 13件

屋根まで燃えたのは、すべて「鋼板等なし型」だった

13件を分析した結果として、報告書は3つの特徴を挙げています。モジュールの発火は使用年数7年以上の製品で発生していること。ケーブルの発火は主に施工不良が原因と推定されること。そして、屋根の下地材(野地板)へ延焼したのは、すべて鋼板等なし型のモジュールだったことです。

鋼板等なし型とは、裏面に鋼板のないモジュールを、屋根の防水シートの上に直接設置するタイプを指します。報告書は設置形態を4つに分類し、それぞれの普及規模も載せています。

モジュールの設置形態と設置割合(累積約2,374,700棟・平成30年10月現在の経済産業省ヒアリング)
設置形態 構造 設置割合
屋根置き型・鋼板等敷設型 屋根材の上に架台で設置/モジュール直下に不燃材料の鋼板等を敷設 合わせて約94.8%(約225万棟)
鋼板等付帯型 裏面に鋼板等を付帯したモジュールを直接設置 約0.7%(約17,700棟)
鋼板等なし型 裏面に鋼板がないモジュールを防水シートの上に直接設置 約4.5%(約107,000棟)

9割超の住宅では、モジュールと屋根の木材の間に不燃材料が挟まっています。発火しても屋根まで燃え広がりにくい構造です。一方で約10.7万棟と推定される鋼板等なし型には、報告書はリスクアセスメントの早急な実施や、保証期間を超えたものへの応急点検を求めました。消費者庁の白書は、屋根の木材との間に不燃材料等を挿入することを当面の最も有効な再発防止策としています。

モジュールの発火は7年目以降に始まっている

モジュールが発火に至る流れとして、報告書は4段階のプロセスを想定し、使用中の製品の現地調査で妥当性を確かめています。配線接続部の抵抗が上がり、保護回路であるバイパス回路に電流が流れ続け、その回路が断線し、最後に配線接続部が断線または異常発熱するという流れです。推定発火箇所がモジュールとされた火災は、いずれも使用年数7年以上の製品で起きていました。

気になるのは、この途中経過が住人に見えないことです。製造業者6社への聴取りでは、バイパス回路に電流が流れ続ける状態をシステムとして異常と認識しているものの、それを所有者に知らせるアラーム機能は6社とも自社製品に装備していないと回答しています。発電量のモニターに大きな異常が出る頃には、プロセスが進んでいる可能性があります。

所有者の7割は点検をしていない

事故調が全国1,500サンプルで行ったアンケートでは、修理を要する故障を約1割が経験している一方、保守点検は全体の約7割が実施していませんでした。導入後10年を超える製品は今後急速に増えると報告書は指摘しています。設置から年数が経った住宅ほど、発火プロセスの入口に近づいているのに、点検の習慣がないのが実態です。

ここで注意したいのは、この事実が訪問販売の営業トークに使われていることです。「点検が義務化された」と言って屋根に上がりたがる業者の見分け方は悪質業者の見分け方で扱っています。点検が大切であることと、目の前の業者に頼んでよいかは別の問題です。

設置済みの家が確認できること

ここから先は当サイトの整理で、公的な基準ではありません。

  1. 設置時の書類で設置形態を確認する。鋼板等なし型かどうかが分からなければ、施工店かメーカーに型式を伝えて問い合わせる
  2. 設置年を確認する。7年以上経っているなら、メーカー保証や定期点検の記録が残っているかを見る。保証の仕組みは施工保証と製品保証の違いに整理した
  3. 点検をまだ一度も受けていない場合は、設置した施工店かメーカーの窓口に相談する。飛び込みの業者に屋根へ上がらせない
  4. モニターの発電量が不自然に落ちた、ブレーカーが落ちる、焦げた臭いがするといった変化があれば、使用をやめて設置業者へ連絡する

これから設置する人にとっては、この報告書は業者選びの材料になります。見積もりの段階で設置形態と点検体制を質問して、答えられるかを見る。比較の手順は見積もりの取り方と太陽光の失敗例にまとめています。パワコンや蓄電池を含めた機器構成の考え方、導入費用の全体像は費用ガイドの記事、交換や再設置で使える制度は補助金の一覧で確認できます。

火災という言葉の強さに引きずられず、数字で見ると論点は2つに絞れます。火元の多数派はパワコンと接続箱であること。屋根まで燃えるかどうかは設置形態でほぼ決まっていたこと。自宅がどちらの条件に当てはまるかを知ることが、不安への一番実際的な対処です(当サイトの整理です)。点検を口実にした営業への備えは悪質業者の見分け方をどうぞ。

この記事の情報について

出典は消費者安全調査委員会「消費者安全法第23条第1項の規定に基づく事故等原因調査報告書【概要】—住宅用太陽光発電システムから発生した火災事故等—」(平成31年1月28日)および消費者庁の白書コラム「住宅用太陽光発電システムから発生した火災事故等報告書の公表」です。確認日は2026年8月8日(出典リンク先の掲載と引用箇所は2026年8月13日に再確認)です。当サイトが火災事故の現場や製品を独自に調査したものではなく、記事中の件数・割合はすべて公的資料の記載です。

確認していない範囲: 報告書の本文(今回確認したのは概要版です)、平成29年11月以降の事故件数の推移、報告書公表後のフォローアップ資料の詳細、消防庁・NITEの個別統計、匿名化されている製造業者名は確認していません。事故件数の対象期間は平成20年3月〜平成29年11月であり、現在の発生状況を示すものではありません。