「リチウムイオン電池の火災が急増している」という報道を見て、家に蓄電池を置くのが不安になった方へ。国と東京消防庁が出している数字を並べると、燃えているものの中身が見えてきます。結論を先に書くと、増えているのはモバイルバッテリーなどの携帯機器で、家庭用の据置型蓄電池は上位の項目に出てきません。
東京消防庁が製品別の内訳を出している
住宅で起きたリチウムイオン電池関連の火災は、たしかに増えています。
リチウムイオン電池に起因する火災が、近年急増しています。令和6年中は、115件発生し、過去最多となっています。
ここで止めずに、内訳を見ます。東京消防庁は製品ごとの件数を公表しています。
| 製品 | 件数 |
|---|---|
| モバイルバッテリー | 35件 |
| 電気カミソリ | 13件 |
| 携帯電話機 | 10件 |
| コードレス掃除機 | 9件 |
| ポータブル電源 | 8件 |
| 電動アシスト付き自転車 | 6件 |
| タブレット | 5件 |
| ワイヤレスイヤホン | 5件 |
| 電動工具 | 4件 |
| ノートパソコン | 3件 |
| ファン付き作業着等バッテリー | 2件 |
| その他 | 15件 |
| 計 | 115件 |
この一覧に家庭用蓄電池の項目がありません。ポータブル電源は8件ありますが、据置型は上位に出てきません。ただし注記があります。
※発生が1件のものは「その他」に分類し、携帯扇風機、コードレスヘアアイロン、ビデオカメラ、音楽プレーヤーなどが含まれています。
1件のものは「その他」に入るため、0件と断定はできません。言えるのは上位の項目には出てこないということです。ポータブル電源との違いはポータブル電源と家庭用蓄電池の記事に整理しました。
出火の原因は「充電のしかた」と「落下」
同じページに、どういう状況で起きているかも書かれています。
リチウムイオン電池関連火災(令和6年中)のうち、約6割が充電中に発生しています。製品の欠陥を除き、最も多いのは「充電方法誤り(正規品以外で充電)」です。非充電中では、「分解・廃棄・バッテリー交換」により多く発生しています。また、「外部衝撃(落下)」によるものは、充電の有無にかかわらず発生しています。
最多の原因は正規品以外の充電器で充電すること。次いで分解・廃棄・電池交換、そして落下です。
ここを据置型の家庭用蓄電池に当てはめると、事情がかなり違います。充電器を自分で選ぶことはなく、機器に組み込まれています。持ち歩かないので落としません。分解や電池交換を自分ですることもありません。最多の原因が起こりにくい使い方だということです(このサイトの整理です)。
国は蓄電池設備の火災を別に数えている
据置型については、総務省消防庁が別の集計をしています。令和5年3月の検討部会報告書から。
消防庁が把握している過去 9 年間の製品火災※のうち、蓄電池設備・無停電電源装置に起因する火災は 18 件(リチウムイオン電池5件、鉛蓄電池 13 件、ニッケル水素蓄電池0件)であった。火災の規模については、部分焼(1 ㎡・2 ㎡)2 件、ぼや 15 件、不明 1 件で、火災による死者・傷者はなかった。火災となった要因は、経年劣化 8 件、過充電 2 件、管理不良 2 件、製造不良 1 件、不明 5 件で、出火部分は蓄電池 13 件、他部品 4 件、不明 1 件であった。
9年間で18件。しかも鉛蓄電池が13件で、リチウムイオンは5件です。死者・傷者はありません。
数え方も明記されています。
① 過去9年間の製品火災件数:16,118 件(9年間の製品火災報告※3から最終報を抽出)
② 蓄電池に起因する製品火災件数:1,110 件)(出火原因分類表の発火源小分類のうち【1302 充電式電池】【1303 蓄電池】【1305リチウム電池】を抽出
③ 蓄電池設備・無停電電源装置に起因する火災:18 件(全て死傷者なし)(蓄電池に起因する火災のうち車両等・製品内蔵型・モバイル型バッテリー以外のものを抽出)
電池に起因する製品火災1,110件のうち、据置型の設備によるものは18件です(約1.6%。このサイトの計算)。残りは車両・製品内蔵型・モバイル型でした。
規模は「ぼや」が大半
報告書は火災の規模についても書いています。
火災の規模はぼやが大半を占めており、部分焼も焼損面積 1~2 ㎡程度に収まっていることから、小規模な火災が多いといえる。
リチウムイオン蓄電池についての記述もあります。
リチウムイオン蓄電池については、定置用の蓄電池で半焼以上の大規模な火災は確認されていないものの、潜在的な危険性を有する蓄電池であるため、鉛蓄電池の蓄電池容量と同等の基準値とすべきである。
「半焼以上の大規模な火災は確認されていない」。同時に「潜在的な危険性を有する」とも書かれています。危険がないという話ではありません。もう1つ、熱暴走についての脚注もあります。
※2 消防庁が把握している過去の火災のうち、電解液の漏出(熱暴走)による蓄電池からの出火したものは確認できていない。
原因の内訳は種類で違う
18件の中身を分けると、燃え方の傾向が見えます。
鉛蓄電池における火災は 13 件中 8 件が経年劣化を要因としており、多数を占めている。
リチウムイオン蓄電池における火災は 5 件中 2 件が過充電等を要因としている。なお、リチウムイオン蓄電池は鉛蓄電池と比較すると新しい製品が多いため、経年劣化による火災が少ないものと考えられる。
報告書自身が「新しい製品が多いため経年劣化による火災が少ない」と注意を促しています。これから年数が経てば傾向は変わり得る、という読み方になります。
普及の速さも押さえておく
定置用蓄電池の出荷台数※2を見ると、リチウムイオン蓄電システムの場合、令和3年度には年間 13 万台を超える出荷台数があり、平成 23 年度の約 2,000 台から 11 年間で 65倍に拡大しており、今後も更なる増加が見込まれる。
11年で65倍。台数が増えれば件数も増える可能性があります。国も基準の見直しを進めていて、報告書はこう締めています。
今後、さらなる蓄電池設備の大容量化と家庭用蓄電池の普及が予想されるが、これまで以上に安全な蓄電池設備が普及していくことを期待する。
安全基準は容量で区切られている
この報告書が示した見直し案が、現在の届出基準の元になっています。
| 蓄電池容量 | 安全基準 | 消防機関への届出 |
|---|---|---|
| 10kWh以下 | 消防法令対象外 | 不要 |
| 10kWh超 20kWh以下 | 消防法令によるもの/標準規格による安全要求事項に適合するもの | 不要 |
| 20kWh超 | 消防法令によるもの | 必要 |
家庭用の多くは10kWh前後なので、この表の上2段に入ります。届出の詳細は消防への届出の記事にまとめました。なお報告書には、20kWh超について留保も書かれています。
今回は、一般住宅用に設置されることが多い 20kWh 以下の小規模な蓄電池設備を対象に検討を行ったものであり、蓄電池容量が 20kWh を超える蓄電池設備については、十分に火災安全性が評価できているといえない。
読み取れることの整理
ここから先はこのサイトの整理で、公的な判断ではありません。
| 問い | 資料から言えること |
|---|---|
| リチウムイオン電池の火災は増えているか | 増えている(東京消防庁・令和6年中115件で過去最多) |
| その中心は何か | モバイルバッテリー35件が最多。家庭用蓄電池は上位に出てこない |
| 据置型の火災件数は | 9年間で18件(うちリチウムイオン5件)。死者・傷者なし |
| 規模は | ぼやが大半。部分焼も1〜2㎡程度 |
| 危険はないのか | そうは書かれていない。「潜在的な危険性を有する」と明記されている |
| 今後も同じか | 分からない。出荷は11年で65倍、経年劣化による火災はこれから増える可能性がある |
設置するときに確認すること
- 入れる機種が標準規格に適合しているか。10kWh超20kWh以下の区分では、規格適合が届出不要の条件になっています
- 容量が20kWhを超えるか。超えるなら消防への届出の話になります
- 設置場所が機種の条件に合っているか(設置場所の記事)
- 保証と点検の条件。経年劣化が鉛蓄電池の火災要因の多数を占めていました(保証の記事)
- エラー表示が出たときの連絡先(エラー表示の記事)
太陽光パネル側の火災については太陽光の火災の記事に別途まとめています。蓄電池の記事の一覧は蓄電池のまとめにあります。なお国は、蓄電池を実際に燃やす試験も行っています。その中身は国の燃焼試験の記事にまとめました。
まとめ
- 東京消防庁の内訳では、住宅のリチウムイオン電池関連火災115件の最多はモバイルバッテリー35件
- 家庭用の据置型蓄電池は、その一覧の上位に出てこない(1件のものは「その他」に入るため0件とは断定できない)
- 最多の出火原因は「正規品以外で充電」と「落下」。据置型では起こりにくい使い方
- 消防庁の集計では、蓄電池設備・無停電電源装置に起因する火災は9年間で18件。うちリチウムイオン5件、鉛蓄電池13件
- 死者・傷者はなく、規模はぼやが大半
- ただし報告書は「潜在的な危険性を有する」とも書いている。出荷は11年で65倍に増えている
「燃えるか燃えないか」ではなく、何が燃えているかを見ると判断できます。心配な点は、見積もりの段階で機種の規格適合を確認してください。
この記事の情報について
出典は、総務省消防庁「蓄電池設備のリスクに応じた防火安全対策検討部会報告書」(令和5年3月・全51ページ。蓄電池設備に起因する火災の件数と内訳、抽出手順、火災の規模、種別ごとの要因、出荷台数、安全基準の適用区分)、東京消防庁「住宅でも注意!リチウムイオン電池関連火災」(2025年12月9日更新。令和6年中の件数、製品用途別の内訳、出火の状況)です。報告書はPDF本文を直接取得して確認しました。確認日は2026年9月6日です。割合の計算はこのサイトによるもので、公的な数値ではありません。当サイトは施工・販売を行っておらず、記載は公表資料の読み取りです。
確認していない範囲: 報告書がいう「過去9年間」が具体的にどの年度から何年度までかは本文に明記がなく、確認できていません。この報告書より後(2023年以降)の蓄電池設備に起因する火災件数も確認していません。東京消防庁の内訳に家庭用蓄電池が含まれるかどうかは、1件のものが「その他」に分類されるため断定できません。東京消防庁の数字は同庁管内のもので、全国の統計ではありません。NITEの事故情報データベースにおける家庭用定置型蓄電池の事案、メーカー別・機種別の事故件数も確認していません。
ソーラー資料室