蓄電池の音はうるさいか|公的な調査報告は見つからなかった

蓄電池

蓄電池の音について調べると、エコキュートの低周波音の話が混ざって出てきます。この2つは別の機器です。結論から書くと、蓄電池そのものの運転音を公的機関が調査した報告は、探した範囲では見つかりませんでした。見つかったのは、メーカーが公表している測定値と、別の機器についての国の報告書です。

メーカーは数値を公表している

あるメーカーのQ&Aから。

Q 動作中の騒音レベルはどのくらいですか。
A 40dB(A)以下となっており、図書館と同等レベルの静かさです。40dB(A)は、JIS C 1509-1 で規定するA特性サウンドレベルを示します。製品正面中央から 1 m、高さ 1 m の距離での測定値です。

ここで見落とせないのは測定条件です。製品正面から1m、高さ1mでの値だと書かれています。隣家の窓の位置での値ではありません。距離が変われば聞こえ方も変わります。

音の発生源についても記載があります。

Q 製品からノイズ等は出ませんか?その他、何か影響を受けるものはありませんか。
A 動作中はパワーコンディショナ内蔵ファンの動作音が発生します。壁との距離等、設置、環境により音の聞こえ方が異なることがあります。装置の近くでテレビやラジオなどを使用する場合は、テレビの画面が乱れたり、ラジオに雑音が入ることがあります。3 m以上離してご使用ください。受信している電波の弱い場所では電波障害を受ける可能性があります。

音を出すのはパワーコンディショナの内蔵ファンで、壁との距離や環境で変わるとメーカー自身が書いています。設置条件の全体像は設置場所の記事にまとめました。

公的な調査報告があるのは、蓄電池ではなくエコキュート

消費者庁の消費者安全調査委員会が、2014年に報告書を出しています。ただしこれは家庭用ヒートポンプ給湯機(エコキュート)についての調査で、蓄電池の報告書ではありません。

群馬県に在住するA氏(50歳代男性)は、平成21年2月頃、不眠、頭痛、めまい、吐き気等を発症した。その後、同年5月頃、A氏の配偶者B氏(50歳代女性)も同じような症状を訴えた。

対象の機器は、蓄電池とは仕組みが違います。

ヒートポンプ給湯機は屋外に設置され、給水した水を温めて湯を作るヒートポンプユニットと、この湯を蓄える貯湯ユニットで構成されている。深夜電力を利用するため、一般的には午後11時から午前7時までの時間帯に稼動する。ヒートポンプ給湯機の運転音は、主にヒートポンプユニットから生じる。ヒートポンプユニットには、コンプレッサーとファンの2つの回転する部品が搭載されており、それぞれが運転音を発生させる。

コンプレッサーを持つ機器と、ファンだけの機器という違いがあります。エコキュートと蓄電池の役割の違いはエコキュートと蓄電池の記事に整理しました。

それでも参考になる部分がある

機器は違いますが、夜に動く屋外機器をどこに置くかという論点は共通します。報告書には設置場所の分析があります。

ヒートポンプ給湯機の設置場所は、発症者の寝室から5m以下が19事案中13事案であった。寝室までの距離が短い、窓等の開口部に近い等、「騒音等防止を考えた家庭用ヒートポンプ給湯機の据付けガイドブック」【注】に沿って設置されているとは言い難いものが多くみられた。

そのガイドブックの3つのポイントが注に引かれています。

(1)お客様および隣接するご近所様の寝室の傍は避ける。(2)ヒートポンプユニットの近辺(上方向含む)に窓や床下通風口等の音の侵入口があれば極力距離をとる。(3)ヒートポンプユニットの周囲に極力スペースを設け、壁や塀で音が反射しないように工夫する。

繰り返しますが、これはヒートポンプ給湯機のガイドブックであり、蓄電池のものではありません。ただし「寝室の傍を避ける」「開口部から距離をとる」「壁や塀で反射させない」という考え方は、屋外に置く機器に共通するものだと考えられます(このサイトの整理です)。

基準を下回っても問題が起きないとは限らない

報告書には、環境省の参照値についての説明が引かれています。

「測定値がどの周波数でも『参照値』以下であれば、多くの場合、低周波音は原因ではないと考えられるので、100Hz以上の(低周波音ではない)騒音や、地盤の振動など他の原因について慎重に検討するよう手引書で示しています。問題となる周波数や原因が違っていれば、十分な対策の効果が得られないからです。ただし、感受性等に個人差があることもあり、『参照値』以下であっても低周波音が原因である場合も否定できません。この場合は、詳しく調査をするよう、『手引書』では勧めています。」

参照値以下でも原因である場合は否定できない、と国が書いています。個人差についても記述があります。

同じ住宅に居住していても、健康症状を訴える者と訴えない者がいた。

「40dB以下だから大丈夫」と言い切れる話ではない、ということです。

分かっていることの整理

蓄電池の音について確認できたこと・できなかったこと(2026年9月6日時点)
知りたいこと 確認できたか
メーカーが公表する騒音値 確認できた(40dB(A)以下という例)
その測定条件 確認できた(正面1m・高さ1m)
音の発生源 確認できた(パワコン内蔵ファン)
蓄電池の運転音に関する公的な調査 見つからなかった
蓄電池の騒音の公的な基準 見つからなかった
隣家での実測値 見つからなかった

設置前に決めておくこと

ここから先はこのサイトの整理で、公的な基準ではありません。

  1. 設置予定の場所から、自宅と隣家の寝室までの距離を測る
  2. その位置に窓や換気口があるかを見る
  3. 壁や塀に囲まれた場所かを確認する。反射する条件になっていないか
  4. メーカーの騒音値と、その測定条件(何m離れた値か)を書面で確認する
  5. テレビ・ラジオからの距離。3m以上という記載がある機種があります
  6. 夜間に充電する運転にするなら、動く時間帯を把握しておく(運転モードの記事)

見積書の読み方は蓄電池の見積もりの見方にまとめました。近隣とのトラブルの型は近隣トラブルの記事(太陽光の反射光と落雪)にあります。蓄電池の記事の一覧は蓄電池のまとめから辿れます。

まとめ

  • メーカーの公表値は40dB(A)以下という例がある。測定は製品正面から1m、高さ1m
  • 音を出すのはパワーコンディショナの内蔵ファン。壁との距離や環境で聞こえ方が変わるとメーカーが明記している
  • 蓄電池そのものの運転音を扱った公的な調査報告は、探した範囲では見つからなかった
  • 消費者安全調査委員会の報告書はヒートポンプ給湯機のもので、蓄電池とは別の機器
  • その報告書では、設置場所が寝室から5m以下の事案が19件中13件だった
  • 環境省の参照値以下でも「低周波音が原因である場合も否定できません」と説明されている

音の問題は、機器の数値だけでは決まりません。設置の位置を決める前に、隣家の窓との距離を確認しておいてください。

この記事の情報について

出典は、ニチコン株式会社「Q&A 9.7kWh 単機能蓄電システム」(騒音値と測定条件、動作音の発生源、電波への影響)、消費者庁 消費者安全調査委員会「消費者安全法第23条第1項に基づく事故等原因調査報告書【概要】-家庭用ヒートポンプ給湯機から生じる運転音・振動により不眠等の健康症状が発生したとの申出事案-」(平成26年12月19日・全12ページ。事案の概要、機器の構成と稼働時間帯、環境省の参照値の説明、設置場所の分析、据付けガイドブックの引用、個人差)です。いずれも確認日は2026年9月6日で、PDFは本文を直接取得しています。報告書はエコキュートを対象としたもので、蓄電池を対象とした調査ではありません。当サイトは施工・販売を行っておらず、記載は公表資料の読み取りです。

確認していない範囲: 家庭用蓄電池の運転音について公的機関が行った調査報告は、今回探した範囲では見つかりませんでした。蓄電池の騒音に関する公的な基準、隣家の位置での実測値、引用したメーカー以外の騒音値と測定条件も確認していません。報告書の本文(2.3MB)は概要版のみを確認しており、全文は読んでいません。低周波音の測定方法や参照値の詳細、蓄電池が低周波音を発生させるかどうかも確認していません。音に関する近隣トラブルの相談件数の統計も確認していません。