※本記事にはプロモーションが含まれます
業者から出てくる発電量のシミュレーションは、どこまで信じていいのか。
結論から書くと、「盛られている」と決めつけるのも、そのまま信じるのも、どちらも正しくありません。数字が違ってくる理由は構造的なもので、それを知っていれば自分で検算できます。
そもそも元データは「推定値」である
日本の発電量シミュレーションのほとんどは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の日射量データベースを元にしています。
このデータベースの解説書に、重要な記述があります。
日本国内で気象庁が日射量を観測している地点は約50カ所
全国に約50カ所。それ以外の場所の日射量は実測ではなく、衛星データと計算モデルによる推定値です。NEDOは「ハイブリッドメッシュ法」と呼んでいます。
収録されているデータは2種類です。
| 名称 | 内容 | 統計期間 |
|---|---|---|
| MONSOLA-20 | 全国1kmメッシュ・月平均の推定値 | 2010〜2018年 |
| METPV-20 | 全国835地点・毎時の推定値(平均年・多照年・寡照年) | 2010〜2018年 |
ここから先は当サイトの整理です。「推定値だから信用できない」という意味ではありません。日本全国をカバーする公的なデータはこれしかなく、業者のシミュレーションも研究機関の試算も、同じ土台の上に乗っています。知っておくべきなのは、元データの時点ですでに幅があるということです。
方位角と傾斜角には「刻み」がある
もうひとつの構造的な理由です。データベースの収録範囲は次のようになっています。
方位角: 0 ~ 345 度 ( 15 度刻み) 傾斜角: 10 ~ 90 度 ( 10 度刻み)
方位角は15度刻み、傾斜角は10度刻み。実際の屋根がちょうどその角度である保証はありません。間の角度は補間して計算することになります。
なお方位角の基準は真南が0度です。磁石が指す南(磁南)とは数度ずれます。屋根の向きを南向きと言うときの基準がどちらかで、わずかに数字が変わります。
解説書には興味深い記述もあります。
沖縄地方の夏季など、太陽高度が非常に高い場合に最適傾斜角がわずかに北向きになることがあります
屋根の向きと発電量の関係は南向きが有利は何%かで詳しく扱っています。
複数社のシミュレーションを並べる
1社の数字だけでは、その前提が甘いのか厳しいのかが分かりません。同じ屋根に対して複数社が出した数字を並べると、前提の置き方の差が見えます。
広告。申し込みは各社の公式サイトで行われます。
業者ごとに数字が違う3つの理由
同じ屋根に対して、A社とB社で年間発電量の予測が違うことがあります。理由は主に3つです。ここから先は当サイトの整理です。
| 要因 | 何が起きるか |
|---|---|
| 損失係数の置き方 | パネルの温度上昇、配線の損失、パワコンの変換効率、汚れ。これらをまとめて何%引くかは各社の判断。ここが最も差が出る |
| 使うデータの年次 | MONSOLA-20(2010〜2018年)を使うか、旧版のMONSOLA-11(1981〜2009年)を使うか |
| 影の扱い | 隣家・電柱・アンテナの影を計算に入れるかどうか。入れない前提のシミュレーションは数字が大きく出る |
この3つのうち、影の扱いが最も現実との差を生みます。データベースは屋根の周囲の建物までは知りません。
国が使っている数字と比べる
自分で検算する方法があります。国が売電価格を決めるときに使っている設備利用率13.7%という数字と比べることです。
設備利用率とは、設備が1年間フル出力で動き続けた場合に対して、実際に何%発電したかの割合です。13.7%を年間発電量に換算すると次のようになります。
- 1kWあたり:24時間 × 365日 × 13.7% = 約1,200kWh/年
- 5kWなら:約6,000kWh/年
この計算は当サイトによるものです。委員会がこの数値を発電量として示しているわけではありません。
業者のシミュレーションがこれを大きく上回っている場合、損失を少なく見積もっているか、日照条件の良い地域を前提にしている可能性があります。逆に大きく下回る場合は、影や屋根の向きの条件が厳しいということです。
大事なのは、差があること自体ではなく、その理由を説明できるかどうかです。「なぜこの数字になるのか」を聞いて、損失係数と影の扱いを答えられる会社かどうかは、判断材料になります。
自分で概算する手順
NEDOのデータベースは誰でも使えます。ここから先は当サイトの整理です。
- WEB版日射量データベース閲覧システムを開く
- 自宅の場所をメッシュで指定する
- 屋根の方位角・傾斜角に近い条件の斜面日射量(kWh/㎡・日)を読む
- 年間日射量 × 設置容量 × 損失係数(一般に0.7〜0.85程度)で概算する
損失係数をどう置くかで結果が変わりますが、業者の数字が「ありえない範囲」かどうかの判断には十分です。
注意点として、古い記事にあるNEDOの旧URL(appww2.infoc.nedo.go.jp)は現在アクセスできません。上のリンクが現行のものです。
まとめ
- 元データのNEDO日射量データベースは、気象庁の実測は全国約50カ所のみ。それ以外は衛星とモデルによる推定値
- 方位角は15度刻み、傾斜角は10度刻み。実際の屋根がぴったり合うとは限らない
- 業者ごとに数字が違う主因は損失係数の置き方・データの年次・影の扱いの3つ
- 影を計算に入れないシミュレーションは数字が大きく出る
- 国の想定(設備利用率13.7%)だと1kWあたり年約1,200kWh。ここから大きく外れていないかで検算できる
- 数字そのものより、その根拠を説明できる会社かどうかが判断材料になる
前提を確認できる見積もりを取る
シミュレーションの数字そのものより、その根拠を説明できる会社かどうかが判断材料になります。複数社に同じ質問をすると差が出ます。
広告。申し込みは各社の公式サイトで行われます。
この記事の情報について
以下を2026年8月12日に確認したものです。引用は原文のままです。
- NEDO「日射に関するデータベース:日射量データベース」
- NEDO「日射量データベースの解説書」(全19ページ)
- WEB版日本国内日射量データベース閲覧システム
- 経済産業省 調達価格等算定委員会(設備利用率13.7%)
確認していない範囲です。
- 「業者ごとに数字が違う3つの理由」は当サイトの整理です。各社のシミュレーション手法を調査したものではありません
- 損失係数「0.7〜0.85程度」は一般に使われる範囲として記載していますが、公的機関が定めた値ではありません
- 設備利用率13.7%から年間発電量を換算した計算は当サイトによるものです。委員会がこの発電量を示しているわけではありません
- 個別の屋根での実際の発電量は、この記事の方法では算出できません。現地調査を伴う見積もりが必要です
ソーラー資料室



