太陽光の「南向きが有利」は何%か|全国一律の換算率は存在しない

設置条件公開 2026年8月8日
太陽光の「南向きが有利」は何%か|全国一律の換算率は存在しない

太陽光パネルは南向きの屋根がいちばん発電する——ここまでは公的データで裏付けられます。では、東向きや西向きの屋根だと何%損をするのか。解説記事には「東西は南の85%」「北は66%」といった数字が並びますが、この換算率の出どころを公的資料にさかのぼると、全国一律の固定値は今回確認した範囲では見つかりませんでした。かわりに存在するのは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が無料公開している、自宅の場所ごとの数字を引けるデータベースです。この記事では、その数字の引き方と、実際に引くと換算率が場所と屋根の勾配でどれだけ動くかを整理します。

換算率の一覧表は、公的資料には見つからない

メーカーや施工店のサイトには方位別の換算表がよく載っていますが、出典が書かれていないことがほとんどです。経済産業省・NEDOの公開資料を確認した範囲では、全国どこでも使える「南=100、東=◯、北=◯」という公的な固定値は見つかりませんでした。

理由は単純で、方位による差は太陽の高さ(緯度)と屋根の勾配で変わるからです。全国で1つの表にすること自体に無理があり、国はかわりに、場所ごとの数字を引けるデータベースを整備しています(当サイトの整理です)。

NEDOのデータベースは1km四方ごとの数字を持っている

それが NEDO の日射量データベースです。現在のWEB版に収録されている月平均データはMONSOLA-20と呼ばれ、NEDOの解説書はこう説明しています。

前者のMONSOLA-20は、統計期間2010年~2018年の全国1kmメッシュ、月平均の推定値を収録したデータベースです。

日本国内で気象庁が日射量を観測している地点は約50カ所しかないため、気象衛星のデータと推定モデルを組み合わせて、全国を1km四方の網の目(メッシュ)で埋めています。方位角は真南を0度として15度刻み、傾斜角は10度刻みで収録されており、自宅を含むメッシュを地図で選ぶと、屋根の向きと勾配の組み合わせごとの日射量が表で出てきます。

1つ注意があります。古い解説記事が案内している旧・閲覧システム(appww2で始まるアドレス)は、2026年8月時点でドメインごと消滅しています。現在の入口はNEDOの「日射に関するデータベース」ページにあるWEB版閲覧システムです(この記事末尾にリンクがあります)。

東京都心のメッシュで引くと、東西82%・北61%

当サイトで、東京都千代田区を含む3次メッシュ(53394611)の年間値をWEB版閲覧システムから抽出しました。単位は1日あたり・1平方メートルあたりの日射量(kWh/㎡・日)の年平均です。

千代田区(3次メッシュ53394611)の月平均斜面日射量・年間値。NEDO日射量データベース閲覧システムより当サイト作成(2026年8月8日確認)
屋根の向き 傾斜10° 傾斜20° 傾斜30° 傾斜40°
真南(方位角0°) 4.05 4.27 4.39 4.41
東・西(方位角90°・270°) 3.74〜3.75 3.69〜3.70 3.58〜3.59 3.44〜3.45
真北(方位角180°) 3.43 3.07 2.67 2.33

一般的な屋根勾配に近い傾斜30度で比べると、南の4.39に対して東西は3.58〜3.59で約82%。よく見る「85%」より少し厳しい数字です(比率の計算は当サイトによるものです)。

北向きは2.67で約61%。「66%」という通説より落ち込みが大きく、傾斜が急になるほどさらに下がります(傾斜40度で2.33)。なお、この表は日射量の比較であって、発電量そのものの比較ではありません。温度などの影響を含めた発電量への公的な換算式は確認できていません。

「何%損か」は勾配と場所で61%から93%まで動く

同じ東京都心でも、傾斜10度の緩い屋根なら北面は3.43で、南面4.05の約85%まで差が縮みます。屋根が緩いほど、どの方位もほぼ水平面に近づくためです。

場所を変えると、さらに動きます。同じ方法で札幌市中央区と那覇市のメッシュを引くと、傾斜30度の北面は札幌で南の約65%、那覇では約79%。緯度が低いほど太陽が高く昇るため、方位の差が縮むのです。NEDOの解説書自身が、沖縄地方の夏には最適傾斜角がわずかに北向きになることがある、と書いているほどです。

北向きは「南の何%」か(年間日射量・当サイトの計算) NEDO日射量データベース閲覧システムの値から算出。2026年8月8日確認 東京・傾斜30°61% 札幌・傾斜30°65% 那覇・傾斜30°79% 東京・傾斜10°85% 那覇・傾斜10°93% 100%

つまり「南向きでないと何%損か」への答えは、この幅のどこかに自宅の屋根ごとの1点として存在するのであって、全国共通の1つの数字ではありません。数字を知りたければ、通説の表ではなく自宅のメッシュを引くのが正確です(当サイトの整理です)。

見積もりのシミュレーションをこの数字で検算する

ここから先は当サイトの整理で、公的な基準ではありません。

  1. 業者の発電量シミュレーションを受け取ったら、前提にしている方位角と傾斜角、使っている日射量データが何かを確認する。書かれていなければ質問する。見積書の見方の記事に確認項目をまとめている
  2. NEDOのWEB版閲覧システムで自宅の住所を検索し、3次メッシュを選んで表を出す。屋根の向きと勾配に近い組み合わせの年間値を、南向きの値と比べる
  3. 東西の屋根は東京都心の例で南の約8割。載せる価値があるかは、費用と回収の前提次第になる。考え方は回収年数の12の前提の記事で整理している
  4. 北面への設置は、日射量の落ち込みが大きいうえ勾配で大きく変わるので、数字を引いてから判断する。そもそも屋根に載るかどうかの確認は設置条件の記事へ
  5. 1社のシミュレーションだけで決めない。一括見積もりで複数社の発電量の前提を並べると、強気すぎる数字が浮かび上がる

方位の損得は、屋根を変えられない以上「知ったうえで設計に反映する」ことしかできません。費用の全体像は費用ガイドの記事、使える補助金は補助金の一覧、蓄電池を足すかどうかは蓄電池の選び方の記事にまとめています。見積もりの進め方の全体像は見積もりガイドの記事から。実際に比較を始めるなら、一括見積もりの記事で申込後の流れまで確認してから動くのが早道です。

この記事の情報について

以下を2026年8月8日に確認したものです。引用は原文のままです。

方位別の比率(82%・61%など)は、閲覧システムの値から当サイトが計算したものです。当サイトが実際に方位の異なる屋根で発電量を測って比較した立場ではなく、記載は公表データの読み取りです。

確認していない範囲:

  • 方位角90°と270°のどちらが東でどちらが西かの定義。両者の年間値はほぼ同じため、この記事では「東・西」とまとめて扱いました
  • 日射量の比が発電量の比とどこまで一致するか(温度・機器効率などを含む公的な換算式)
  • 「東西は南の85%」「北は66%」という通説の出所
  • 屋根そのものの強度・設置可否(この記事は日射量だけを扱っています)